企業理念とは?目的や使われ方、経営理念との違いを解説
企業理念は、組織の根幹を成すものであり、事業を進めていくうえで軸となる存在です。しかし、企業理念が大切であることはなんとなくわかっていながらも、「そもそも本当に必要なのか」「何のために作るのか」「どうやって決めれば良いのか」と疑問に思っている人もいるでしょう。
企業理念を決めるにあたって重要なのは、自分たちが社会の中でどういう存在なのか、競合他社にはない価値がどこにあるのかを明確にし、それを皆が誤解なく受け取れる表現で言語化することです。なぜなら、企業理念は社員の行動指針やブランドイメージの基盤でもあるため、皆が同じ解釈をしていなければ軸がずれ、事業やブランドイメージが誤った方向に進んでしまうからです。
企業理念は、早く作ることよりも正しく作ることの方が重要です。策定を急がず、まずは企業理念とは何なのか、なぜ必要なのか、そしてどう使われるのかを正しく理解することから始めましょう。この記事では、企業理念を作る前に理解しておきたい、企業理念の根本を解説していきます。
企業理念とは
企業理念とは、組織の根本的な価値や考え方を明文化したものです。この会社が何のために存在するのか、どのような目的で事業をしているのか、社会に対して何を成しとげたいのかといったことをわかりやすく示し、社内外に伝える役割を担っています。
企業理念を社内に伝える意義
企業理念は事業の軸となるものであり、社員の行動指針でもあります。企業理念という基盤があると社員全員が同じ意思を持って同じ方向に進めるようになるので、軸がしっかり作られます。
また、事業を進めるうえで何かを決めるときの、いわゆる判断軸にもなるため、決断を誤ることなく進んでいけるという利点もあります。
企業理念を社外に伝える意義
企業理念をWebサイトなどに載せて外部に公開するのは、自社がどういう会社なのかを顧客や投資家に伝え、アピールするためという企業も多いでしょう。また、自分たちの組織にはどういう価値があり、どのような信念を持っているかを理解してもらって共感を得ることで、外部の人々に正しいブランドイメージを伝えていけるという効果もあります。
企業理念の構成要素
企業理念は、組織の根幹を成す重要な考え方ですが、抽象的になりやすいため、社員や顧客に具体的なイメージを持ってもらうのが難しい場合があります。そこで、企業理念をさらに具体化し、実務に活用しやすい形にする目的で、MVV(Mission:ミッション/Vision:ビジョン/Value:バリュー)の3つの要素でまとめる方法が広く採用されています。
- ● ミッション(Mission):社会に対して果たすべき使命
- ● ビジョン(Vision):目指す未来像
- ● バリュー(Value):社会に対して約束する価値
ミッション(Mission):社会に対して果たすべき使命
ミッションとは、企業の存在意義や、どのように社会に貢献するのかを表したものです。一つの事例として、当社グラビティーワン株式会社のミッションを見てみましょう。
“お客様をファンに、社員をファンに”
人々が熱烈に応援したくなる、
世界に喜びを増やすブランドを創造する
自分たちの会社が社会に対してすべきことの根本を表したのが、ミッションです。誤って解釈されることのないよう、誰が読んでも誤解なく受け取れる言葉で作ります。
ビジョン(Vision):目指すべき未来像
ビジョンとは、自分たちの組織が将来こういう存在でありたいという「ありたい姿」を表したものです。従業員は、この未来像を目指して事業をすすめていきます。
事例として、当社グラビティーワン株式会社のビジョンを見てみましょう。
私たちのお客様と共に壁を乗り越え、共に喜びを分かち合う、
日本一のブランディング専門会社を目指す
ビジョンは、自分たちがとるべき行動を従業員がイメージできるように、このように具体的な言葉を使って作成します。
バリュー:社会に対して約束する価値
バリューとは、企業が持つ独自性や価値を表したものです。ただ単に、自社が「何を提供するか」を書くのではなく、自分たちだから提供できる強みを伝えるのが、バリューの役割です。
事例として、当社グラビティーワン株式会社のバリューを見てみましょう。
コンセプト開発とデザインを融合した、
Brand Designの知恵と技術
何を提供できるのかをこのようにわかりやすく書くことで、従業員は、自分たちが社会や顧客に対して何を提供すべきなのかを常に意識できるようになります。そして顧客や投資家に対しては、独自性や価値をアピールすることができるのです。
ここでは、以上3つの構成要素を紹介しました。企業によっては、この他に「行動指針」「スローガン」などを加えて4つまたは5つの要素で表すこともあります。
企業理念の目的
企業理念の目的は、会社が長く存続するためにはどういう存在であるべきかを示すことにあります。そしてそのためには、企業理念もまた、どのような時代にあっても会社の根本として存在し続けるものであるべきです。ビジョン、バリュー、行動指針などは、そのために社員がどうあるべきかを具体的に落とし込んだものといえるでしょう。
例えば、新型コロナウイルスの影響でビジネスを大きく変えた企業もあるでしょう。そのために経営方針を変えた組織もあるかもしれません。つまり、経営は時代や社会状況を反映して変わっていきますが、企業の存在価値は変わるものではありません。だから、企業理念はどのような状況でも不変のものであるべきなのです。
企業理念と経営理念の違い
企業理念と経営理念は、似ているようでいて、根本的に異なるものです。
経営理念とは、会社を経営する目的や経営に関する方針のことをいいます。経営者の「このように経営したい」という考え方を明文化したものなので、経営者が代わると経営理念も変わることがあります。 企業理念と経営理念は、企業理念が企業の存在そのものに言及しているのに対し、経営理念は、経営者の価値観や考えを反映させたものであるという点で大きく異なります。
企業理念の作り方
企業理念は、以下の2ステップで策定します。
1.以下の内容を明確にする
- ・ 自社の成り立ちと社会における役割
- ・ 自社の強みや独自性
- ・ 自社が大切にしている価値観や信念
- ・ 自社が描く未来像
- ● 朝礼時に全員で唱和する
- ● 社内報で伝え続ける
- ● 企業理念に関する勉強会を開く
- ● 企業理念に関する自分の考えを書いて提出してもらう
- ● 企業理念とは
- ● 企業理念の構成要素
- ● 企業理念の目的
- ● 企業理念と経営理念の違い
- ● 企業理念の作り方
- ● 企業理念を社内に浸透させる方法
- ● 企業理念に関するQ&A
2.企業理念を策定する
企業理念を策定する詳しい手順は、以下の記事で解説しています。当社グラビティーワンで実際に進めている企業理念の作り方も具体的に紹介していますので、ぜひあわせてお読みください。
▶︎ 企業理念の作り方|企業の価値を反映させた本質的な理念とは
企業理念を社内に浸透させる方法
企業理念を策定しても、それを社内に浸透させるのが難しいと感じている企業も多いのではないでしょうか。企業理念が形骸化してしまい、全員が存在を知ってはいても、日々の行動に反映されないことはよくあります。
企業理念を作っても、それを掲げるだけでは社内に浸透しません。企業理念を策定したら、社員一人ひとりが企業理念の意味を理解し、「自分ごと」として受け入れるように浸透させていく必要があります。
企業理念を社内に浸透させるために、各企業ではさまざまな取り組みをしています。たとえば以下取り組みは、実際に企業で実行されている事例です。
企業理念を浸透させる施策については、以下の記事で詳しく紹介しています。
▶︎ インナーブランディングとは
▶︎ 企業理念を効果的に伝える社内広報のポイント
企業理念に関するQ&A
企業理念の策定や運用に関するよくある質問とその回答を紹介します。
Q:企業理念は誰が決めるものですか。
多くの場合、企業理念は経営層が中心となって策定され、トップダウンで社内に伝えられます。しかし、現場の声を取り入れるために、社員代表や各部署の意見を取り入れるケースもあります。
Q:企業理念は変更できますか。
企業理念は企業の根幹を成すものなので、頻繁に変えることは推奨されません。しかし、社会の変化に対応するために変更されることはあります。
企業理念の変更は、慎重に行なう必要があります。Q:企業理念はSDGsを考慮して作るべきですか。
SDGs(持続可能な開発目標)は、企業が果たすべき社会的責任の指針であり、長期的な成長を支える重要な基盤です。企業理念を策定する際にも、SDGsを考慮する必要があるでしょう。企業理念にSDGsを反映させることで、顧客や取引先などの共感を得やすくなり、企業のブランド価値を高められるというメリットもあります。
企業理念の目的や使われ方、経営理念との違いまとめ
この記事では、企業理念について、経営者が知っておきたい基本を解説しました。
企業理念を策定する際には、会社の価値や存在意義を十分に引き出し、それを適切に表現することがとても重要です。企業理念に沿って経営し、会社が長く繁栄するために、腰を据えてしっかり作り込んでいきましょう。
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