インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、企業理念などを組織の内部に伝え、浸透させるための取り組みのことをいいます。

会社としての理想の状態は、すべての社員が経営者と同じ志を持ち、同じゴールに向かって仕事をすることです。しかし、それを実現できている会社はそう多くはないでしょう。なぜなら、経営者と社員では会社との関係が異なるため、同じ思いを持てといわれても社員にとっては容易なことではないからです。

そこで多くの企業が、経営者の思いを伝えて社員との間の溝を埋め、社員に同じ志を持ってもらうための取り組みを進めています。それが、インナーブランディングです。この記事では、インナーブランディングの基本的な考え方や取り組みについて、事例とあわせて紹介していきます。

インナーブランディングとは

インナーブランディングは、組織の内部に対して行うブランディングです。

インナーブランディングのゴールは、社員全員が企業理念や会社の向いている方向などを理解し、それを行動指針として仕事を進めるようになることです。企業理念は社員が仕事するうえでの軸となるものなので、すべての社員が理解し、共感し、納得して行動に取り入れる必要があります。そのために行われている施策が、インナーブランディングの取り組みです。

インナーブランディングは一朝一夕でできるものではないので、じっくり腰を据えて進め、しっかり定着させていくことが大切です。

インナーブランディングを行う理由

インナーブランディングの鍵となる企業理念とは

企業理念とは、その会社の根本的な存在意義や存在価値、思想などを言語化したものです。なぜその会社が存在するのか、社会にどのような価値を届けたいのか、事業を進める目的は何なのかを明確にすることで、社員が同じ方向を向いて、同じ志を持って事業を進めていくことを目的としています。

企業理念は、誰に向けて発信するかで機能の仕方が変わります。ここでは、3つの立場に分けて整理していきます。

  • ● 会社の経営者
  • ● 会社の社員
  • ● 顧客、社外の人々

会社の経営者

企業理念は、会社経営の基盤となるものです。事業の中で何かを決めたり判断したりする時に、決断の軸となるのが企業理念です。

会社の社員

会社の事業では、社員全員が同じ方向を向いて、同じゴールに向かって仕事を進めていくことが重要です。そしてそのための行動規範となるのが、企業理念です。社員が行動をする時や何かを決める時には企業理念に沿って考え、迷ったり悩んだりした時にも、企業理念に立ち返って行動を決めます。

顧客、社外の人々

企業理念がホームページなどに載っているのを見かけることもあるでしょう。企業理念を外部に向けて発信すると、顧客や見込み顧客に対し、自分たちの会社が何のために存在し、何をしているのか、それによって何を成し遂げたいのかを伝えることができます。採用活動においても、同じ志を持った人に共感してもらいやすいというメリットがあります。

インナーブランディングが難しい理由

インナーブランディングはアウターブランディング(外部に向けてのブランディング)よりも難しいともいわれており、どの企業も時間をかけてコツコツと施策を進めています。

インナーブランディングが難しいのは、経営者と社員の間に、会社に対する思いや意識の根本的な違いがあるからです。

一般的に、経営者は会社のために仕事をしますが、社員は自分のために仕事をします。そのため、経営者がどんなに思いを込めて企業理念を策定したとしても、その根本を理解し、納得し、共感してもらわないまま「この通りに行動しなさい」と言ったところで、社員にとっては「他人ごと」の域を出ないのです。インナーブランディングとは、いってみれば、経営側と社員の間の価値観や考えの相違を埋め、社員に「自分ごと」として捉えてもらうための取り組みです。

インナーブランディング施策の具体例

インナーブランディングに取り組む企業は、それぞれ様々な施策を行っています。

インナーブランディングには「これが正解」というベストな方法があるわけではありませんので、他社の事例などを参考にしながら自社に合ったものを取り入れるのも良いのではないでしょうか。他社が行っている取り組みには、たとえば次のようなものがあります。

インナーブランディング施策例

  1. ● 朝礼時に全員で唱和する。
  2. ● 社内報で伝え続ける。
  3. ● 企業理念に関する勉強会を開く。
  4. ● 企業理念に関する自分の考えを書いて提出してもらう。

インナーブランディング成功例

ある企業のインナーブランディング施策を紹介します。

この会社では、毎週月曜の朝会で「企業理念に基づく今週の自分の行動を決め、上司の前で発表する」という取り組みを行い、企業理念の浸透に成功しています。なぜこの施策がうまくいっているかというと、社員全員が企業理念を自分の行動に落とし込んで言語化しているからです。

社員は企業理念に沿って行動するのが基本ですが、そのように漠然といわれてもどう行動したら良いか分からないため、「他人ごと」になってしまうのです。しかしこの会社では、行動目標にまで落とし込むために企業理念を読み込むという環境に置かれているため、おのずと「自分ごと」として取り入れられるようになりました。

まとめ

この記事では、インナーブランディングについて解説しました。

  1. ● インナーブランディングとは
  2. ● インナーブランディングを行う理由
  3. ● インナーブランディング施策の具体例

組織の内部に対して行うインナーブランディングは、いわば経営側と社員の溝を埋めるための作業です。経営陣と社員が同じ方向を向いて企業経営をしていくために、自社に合った施策を探してみませんか。

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