MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は何から決める? 策定の順序と、経営層に必要な覚悟とは
「MVVを作りたいが、どこから手をつければいい?」
「ミッションとビジョンのどちらから決めるべき?」
MVVの策定において、迷いが生じてしまうことは少なくありません。しかし、MVVを根本的に理解すれば、このような悩みはなくなるでしょう。
MVVは企業の根幹をなすものですが、その意義や構造を正しく理解せずに策定してしまうと、実際の経営や現場の行動と乖離してしまう恐れがあります。
そこでこの記事では、MVVとはそもそも何かを整理した上で、どこからMVVを決めるべきか、なぜその順序が重要なのか、さらには策定後に起こりやすい失敗とその対策までを解説します。 単なるスローガンにとどめず、経営に活かすためのMVVの考え方と、経営層に求められる姿勢についても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の意味
MVVとは、Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)の頭文字をとった言葉です。企業がどのような存在であり、何を目指し、どのような価値を提供するかを体系的に表現します。
まずは、MVVそれぞれがどのような意味を持つのかを整理しておきましょう。
Mission(ミッション)とは
ミッションとは、企業が「何のために存在しているのか」「社会に対してどのような貢献をするのか」を明文化したものです。社会や顧客に対して果たすべき使命を示します。短期的な業績や内部事情ではなく、社会的な役割と意義という視点で定義することで、企業としての根本的な方向性が定まります。
Vision(ビジョン)とは
ビジョンとは、企業の「ありたい姿」を明確にするものです。企業の未来像を示すことで、事業の方向性を明確にし、組織が一丸となって進むべき道筋を示す役割を担います。
Value(バリュー)とは
バリューとは、企業が社会や顧客に対してどのような価値を提供するのか、そしてその価値をどのような姿勢で実現するのかを明文化したものです。バリューを明確にすることによって、日々の業務の行動基準が定まります。
企業はMVVを何から決めている?
MVVを定める際に、何から決めるかを迷うことはないでしょうか。MVVはミッションから決め、ミッションを軸にするのが基本ですが、ビジョンを軸にするという考え方もあります。それぞれがどのような考え方なのかを知っておきましょう。
Mission(ミッション)を軸にしてMVVを決める考え方
ミッションは、企業の存在意義を示すものです。つまり、企業の根幹であり基盤ともいえるでしょう。 たとえば、樹木は、まず根をしっかり張り、それから上に伸びていきます。水分や養分を枝葉から摂ることもありますが、多くは根が吸収します。そして、成長とともに根がどんどん太く長くしっかりしていき、樹齢を重ねて安定していきます。
ミッションは、企業にとって、この根のような存在です。だから、MVVは根幹であるミッションから決めるというのが一般的な考え方です。
ビジョンを軸にしてMVVを決める考え方
ビジョンは、企業のありたい姿、未来像を描いたものです。
企業経営において、まずビジョンを決め、目標を明確にするという手法があります。このアプローチには、ビジョンが明確であることで、組織が進むべき方向を一つに定めやすくなり、社員の行動も統一されやすくなるという利点があります。有効な経営手法の一つといえるでしょう。
ただし、MVVを決めるという観点で考えると、ビジョンを先に決め、それに合わせたMVVを策定するというのは、矛盾した構造ともいえます。ビジョンを軸にして定めるミッションは、企業の根本的な存在意義ではなく、ビジョンの実現を前提に組み立てられた「手段としてのミッション」という位置づけになります。つまり、枝葉を先につけ、その後で根を張るという順番になってしまうのです。
MVVの策定をミッションから行うのは、それが理由です。
MVV策定・運用で起こりやすい失敗例と対策
MVVの策定は、ゴールではなくスタートです。MVVを決めたら、それを社内に浸透させ、従業員全員が同じ方向を向いて行動できるようにしていかなければなりません。 しかし、多くの企業が運用に失敗し、企業経営に役立てられていないのが現実です。
MVV策定・運用で起こりやすい失敗例
MVVの策定や運用段階で多くの企業で起こっている失敗例として、2つのパターンを紹介します。
従業員がMVVを理解できない
せっかくMVVを定めても、現場の従業員が本当の意味で理解していないというケースは少なくありません。 これは、表面的には読んで理解していても、自分の仕事と結び付かず、自分ごととして捉えられていないために起こります。そして、従業員が自分の仕事を結びつけられないのは、MVVで使われている言葉が抽象的で、具体的に提示されていないのが原因のことも多いです。
例として、「社会貢献」という言葉を考えてみましょう。「社会貢献をしましょう」と言われても、漠然としていて行動をイメージできない、何をすればよいのかわからないという方が大半なのではないでしょうか。
「社会貢献」という言葉はMVVによく使われますが、それだけ提示しても従業員は理解できません。それをどう行動に移すのかまで伝えることが重要です。
従業員がMVVを受け入れない
MVVを従業員に伝えても、受け入れてもらえないケースがあります。その場合は、MVVと現場の乖離が背景にあることも多いです。
たとえば、「顧客第一」と掲げているのに、日々の業務では厳しいノルマを課されていれば、「顧客第一に考えたらノルマは達成できない」といった反発につながることもあるでしょう。 この場合、経営層が考える「顧客第一」は、「顧客を第一に考え、知恵を絞って顧客に最適な提案を作り上げましょう」という意図かもしれません。しかし、その意図が従業員に正しく伝わらないため、現場と乖離していると誤解されてしまうのです。
このような誤解を招かないためには、MVVを定める際に経営層が現場を理解し、従業員の視点で言葉を伝えることが不可欠です。
MVV策定・運用で失敗しないための対策
MVVは、ただ定めるだけでなく、時間をかけて浸透させる取り組みを行う必要があります。特に、MVVを経営層だけで定めてトップダウンで文字だけ伝えても、従業員の行動にはつながりにくいからです。
具体的には、たとえば次のような取り組みがあります。
- ● MVVの背景や意図を、経営者自身が言葉で語る場を定期的に設ける。
- ● MVVに基づいたストーリーや事例(成功・失敗)を社内で共有する。
- ● 採用時に、MVVの意味と期待する行動を丁寧に説明する。
- ● MVVに合わせた評価・表彰制度を取り入れる。
- ● 日常業務での意思決定の場面において「この判断はMVVに合っているか」を問いかける文化を築く。
中でも、従業員がMVVについて考え、自分の言葉で理解・発言する機会を増やすのは、有効な方法の一つです。 上に挙げた例の場合、MVVに合わせた評価・表彰制度を取り入れれば、従業員はMVVをより深く理解し、行動に結びつけるようになります。業務でMVVを判断基準とするように上司が問いかけ続ければ、従業員も自然とMVVを判断基準に持つようになるでしょう。
ただしこの場合は、経営層や上司側に、次のような姿勢を一貫して持ち続ける覚悟が求められます。
- ● MVVを判断基準とするということに一貫性を持つ。
- ● MVVを基に判断し、その結果が失敗であったとしても、正しい判断をしたことを評価する。
まずは、経営層や上司自身がMVVを判断基準として体現すること。それが、MVV浸透への第一歩です。
まとめ
この記事では、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をどの順番から定めるのか、どのように運用すべきなのかを解説しました。
- ● MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の意味
- ● 企業はMVVを何から決めている?
- ● MVV策定・運用で起こりやすい失敗例と対策
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