USPの意味と重要性|ブランドコンセプトとの関係とは
事業を進めていく中で、USPという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。 USPは、自社の商品・サービスが持つ、競合他社にはない価値や強みという意味で使われる用語です。そしてその根本には、単なる独自性や強みを示せば良いということではなく、自社だから提供できる価値を「消費者に提案」することが重要だという考え方があります。
この記事では、USPとは何か、その意味や考え方、重要性について整理してお伝えしていきます。
USPとは
USPとは、以下3つの単語の頭文字を合わせたものです。
- ● Unique:唯一の、独特な
- ● Selling:販売
- ● Proposition:提案
元々はアメリカのロッサー・リーブス氏が提唱した言葉で、後にマーケティング用語として定着しました。
USPの特徴は、「消費者への提案」に主眼が置かれている点にあります。
マーケティングにおいて独自性が重要であることは、既に多くの人が理解していることでしょう。他社と同じことをしていても消費者に選ばれるのが難しいため、独自性のある商品開発を進めたり、PRしたりしている企業は多いものです。
しかし、だからといって何でもいいから他社との違いを示せば良いというものではありません。「買いたい」と思ってもらうためには、消費者側の立場で見た自社の強みを明確にし、提供できる価値を示して消費者に提案するべきというのが、USPの考え方です。
USPが重視される理由
USPが重視されている理由を知るために、一つの例について考えてみましょう。皆さんは、以下のような商品紹介を見たことがあるでしょうか。
「イタリアの革を使い、職人が手縫いしたバッグです」
このような紹介を見ると、このバッグは一般的なものに比べて良質なのだろうと感じる人も多いかもしれません。しかし、これを読んだだけで「買いたい」という気持ちになる人は少ないのではないでしょうか。なぜかというと、この紹介文は企業側の言いたいことだけを伝えているものであり、顧客のニーズや心理が考慮されたものではないからです。
イタリアの革を使っていることも、職人が手縫いしていることも、企業努力の表れであり自慢したいポイントかもしれません。しかし、企業にとって大切なこだわりであっても、消費者にとって重要なことではないのです。イタリアの革なら上質かもしれませんが、上質な革製ならイタリアのものでなくても顧客は満足するでしょう。手縫いかミシン縫いかよりも、縫製がしっかりしているかどうかの方が、顧客にとっては重要なはずです。
では、どうすれば良いのかを考えていきましょう。
ブランディングやマーケティングに携わっている皆さんの中には、このような図を見たことがある人も多いかもしれません。
この図は、3つのポイントを満たす、いわゆるブルーオーシャンを狙うと良いということを示しています。
- ● 市場がある(ニーズがある)
- ● 自社が強みを持っている
- ● 競合他社がいない
ここで注目したいのは、市場がある(ニーズがある)という点です。
先に例示した「イタリアの革を使い、職人が手縫いしたバッグです」という紹介文では、一般商品より良い素材を使い、手縫いしているという点で一つの強みを示しているかもしれません。しかし、市場(ニーズ)という視点が抜け落ちているのです。
「買いたい」と思ってもらうために訴求すべきなのは、消費者のニーズをどう満たすか、そして自社がどのような価値を提供できるかというポイントです。このように考えてみると、USPの考え方は理にかなっていると感じられるのではないでしょうか。マーケティングにおいてUSPが重視されているのは、それが理由です。
USPとブランドコンセプトの違い
USPについての理解が進むと、ブランドコンセプトとの違いやお互いの関係が分からなくなってくるかもしれません。USPとブランドコンセプトの大きな違いは、USPが販売活動のために示すものであるのに対し、ブランドコンセプトはブランドを育むためのものであるという点にあります。
目的 | 内容 | |
USP | 商品・サービスを売る | 販売活動のために示すもの |
ブランドコンセプト | ブランドを育む | ブランドの根本的な価値を示すもの |
そして、USPはブランドコンセプトに沿って作られる必要があります。ブランドコンセプトは企業活動の基盤であり、USPもその上で作られるべきだからです。詳しくは以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
▶︎ブランディングとマーケティングはどちらが先?両者の意味や関係、取り組み方のヒント
自社商品・サービスのUSPを考えるには
USPとはどのようなものなのかを確認できたら、実際に皆さんの会社の商品・サービスのUSPを考えてみましょう。整理すべき基本的なポイントは、以下の3つです。
- ● 市場の状況/ニーズ
- ● 競合他社の強み
- ● 自社の強み
この3点を明らかにして、ブルーオーシャンを探してみましょう。
市場の状況/ニーズ
3点の中で最初にすべきことは、市場についての調査です。業界のことは既に理解しているから必要ないと思われるかもしれませんが、ここで必要なのは企業の立場ではなく消費者の立場で見る市場の状況です。
顧客へのアンケートやソーシャルリスニング(SNSのデータ収集)など方法は色々ありますので、消費者の視点で改めて市場を見直し、ニーズを探ることから始めることをおすすめします。
競合他社の強み
次に、競合他社の強みを明確にしていきます。
競合他社のことを知るために、まずは競合がどこなのかをはっきりさせておきましょう。業界の中でもシェアが大きい会社や、自社と似ている会社などが競合他社に当たります。複数社ある方が良いので、無理に絞り込まずに進めていきましょう。
自社の強み
最後に、自社の強みを確認していきます。自社のことを把握する方法は色々ありますがは、従業員にヒアリングするのも一つの有効な方法です。商品・サービスに毎日携わっている人々が、一番よく知っているからです。
ただし、従業員に「当社の強みは何ですか」と聞いても良い答えが出ないかもしれないので、丁寧に話を引き出していくようにしましょう。話を引き出すことの重要性については以下の記事でお伝えしていますので、合わせてぜひご覧ください。
まとめ
この記事では、USP(Unique Selling Proposition)について紹介しました。
- ● USPとは
- ● USPが重視される理由
- ● USPとブランドコンセプトの違い
- ● 自社商品・サービスのUSPを考えるには
USPの考え方は、既に多くの企業に浸透しています。あなたの会社でも、商品・サービスの価値をもう一度見直し、販売戦略に取り入れてみませんか。
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