地域ブランディング|地域を見直し、発展させる方法
地域ブランディングとは、地域を一つのブランドと捉え、その発展のために様々な取り組みをすることをいいます。
日本国内には、人口減少や経済衰退などの問題を抱えている地域が多く存在します。それらの地域では、これまでも問題解決のためにそれぞれの考え方で動いてきましたが、施策を増やすだけでは対処しきれないことが分かってきました。
そこで近年注目されるようになったのが、地域ブランディングです。ブランディングによって地域の根本的な価値を高め、発展させていくというものです。この記事では、地域ブランディングを検討したいと考えている人に向けて、その基本的な考え方のポイントを紹介していきます。
地域が抱える問題
皆さんの住む地域では、どのような問題を抱えていますか。例えば以下のような問題が表面化していて、様々な施策を試みてはいるものの、良い結果に結びつかないという地域も多いのではないでしょうか。
- ● 人口を増やしたい
- ● 経済を発展させたい
ここからは、この二つの問題について、ブランディングの手法を用いた取り組みのポイントを紹介していきます。
人口を増やすための地域ブランディング
その地域に住む人を増やすためにすべきことは、大きく分けると2種類あります。
- ● 住んでいない人に「住んでみたい」と思わせる→PR
- ● 住んでいる人に「住み続けたい」と思わせる→街づくり
この二つは別々の施策のように見えますが、根本は一つです。どういうことなのかを解説していきましょう。
地域ブランディングの考え方
地域ブランディングは、「地域全体を一つのブランドと捉える」という考え方に基づいて行われます。そのため、外向きのPR施策も内向きの街づくりも、その目的や目標、根本的なコンセプトは同じでなければなりません。そうでなければPRの内容が実態を伴わないものになってしまい、移り住んできた人々に「住んでみたらイメージと違った」と評価されてしまう可能性もあるからです。
ブランディングでは、そこでの体験から受けるイメージが一貫していることが重要です。どんどん施策を打って早く人を増やしたいところではありますが、一度立ち止まって戦略を決めてから始める方が、遠回りに見えても実は結果への近道になるでしょう。
地域ブランディングですべきこと
地域ブランディングですべきことはたくさんありますが、中でも重要なのは以下のポイントです。
- ● ターゲットを明確にする
- ● 「移り住んだ自分」をイメージできるように伝える
- ● ブランドコンセプトに沿った街づくりをする
ターゲットを明確にする
まずは、どのような人を増やしたいのか(ターゲット)を明確にしましょう。なぜなら、ターゲットによってPRポイントが変わるからです。
例えば小学生以下の子どもがいる家庭なら、住環境に公園、医療施設、保育園や学校などを求めるかもしれません。しかし働いている大人だけの家庭であれば、交通利便性や地元の飲食店、夜遅くまで開いているスーパーなどを求めるでしょう。
ターゲットによって住環境に求めるものが異なるので、誰に向けてのPRなのかを明確にすることは必要不可欠なのです。
「移り住んだ自分」をイメージできるように伝える
人に選ばれる地域にするために、「ここに住みたい」という気持ちを醸成するPRを考えてみましょう。 例えばあなたが、「私たちの市はすごく良いところです。ぜひ住んでください。」というPRを見たら、住みたいという気持ちになるでしょうか。これだけの情報ではどのように良いのかも分からないため、「じゃあここにしよう」という気持ちにはならないでしょう。
しかし、「私たちの市には大きな公園がたくさんあり、週末には多くの家族が遊びに来ています。自治体のサポートや医療施設も充実していて暮らしやすいので、子育て世帯が次々に移り住んでいます。」と言われたら、小さい子どものいる家庭なら「物件を見てみようかな」という気持ちになるかもしれません。それは、ここに住んで家族で公園に遊びに行く週末や、保育園などの相談をしやすい自治体、子育て仲間がたくさんできるという期待を具体的にイメージしやすいからです。
ここに住むことを自分ごととして捉えてもらえると、「ここに住みたい」という気持ちが醸成されやすくなるでしょう。
ブランドコンセプトに沿った街づくりをする
ブランドイメージは、体験の積み重ねによって作られていきます。PRによって受けた印象、実際に訪れた時の体験、住んでからの体験、その一つひとつの積み重ねによって確立されていくのです。 そのため、PR活動によって良いブランドイメージを作れたとしても、現実がそうなっていなければブランドイメージは確立されません。「実は住みやすくなかった」などとSNSに書かれてしまい、ブランドイメージが崩れてしまうこともあるでしょう。
人を増やそうと思うと目が外にばかり向いてしまうかもしれませんが、住んでいる人にも目を向けて、住み続けたいと思われる街づくりにも取り組んでいきましょう。
経済発展のためのブランディング
近年、農業や工業などの分野において地域ブランドを立ち上げる事例が増えています。「◯◯牛」「◯◯米」のようなブランドを立ち上げ、独自の基準を設けてその基準をクリアしたものをブランド作物として認定するのです。
農業や工業の地域ブランドは、どんどん増えています。なぜなら、地域ブランドには大きなメリットがあり、成功事例も多いからです。
地域ブランドのメリット
成功している事例では、地域や農家に以下のような好循環をもたらしています。
ブランドイメージが確立されると、消費者が他と比較することなく「◯◯牛を買おう」と名指しで選ぶようになります。そうなれば価格競争に巻き込まれず高価格を維持でき、利益が増えるため、原材料や設備、人などに投資できるようになります。するとますます品質の高いものを作れるようになり、ブランドの価値がさらに高まるのです。
地域ブランド開発ですべきこと
地域ブランドの開発を始めると、すべきことが山積みのように感じられるでしょう。そのため、急ぎの課題から優先順位をつけて片付けていくことになるかもしれません。しかし中には、急ぎでないように見えて、実は大切な課題もあります。特に以下3点については後回しにされやすいのですが、地域ブランディングにおいては重要なので、ぜひ早めに決めておきましょう。
- ● 地域ブランドの目的を決める
- ● 品質管理について決める
- ● マーケティングを考える
地域ブランドの目的を決める
地域ブランドを立ち上げる前に、何のためのブランドなのかを明確にしておきましょう。地域全体で行うのはなぜなのか、そうすることで地域がどうなるのか、事業者にはどのような良いことがあるのかを整理しておくのです。
地域ブランドは多くの事業者の集まりなので、各自の目的がバラバラになりやすいものです。最初に統一した目的を決め、それを掲げてブランド作りを進めていきましょう。
品質管理について決める
地域ブランドでは、品質管理がとても重要です。一般的なブランドとは異なり、複数の事業者が集まっているため品質に差が出やすいからです。品質はブランドと消費者との約束なので、徹底して守る必要があります。検査方法や必要な設備なども先に決めておきましょう。
マーケティングを考える
ブランドの方針が決まったら、マーケティングについても考えておきましょう。 ブランドの立ち上げには時間も労力もかかるため、進めていくうちに立ち上げることがゴールのように見えてきてしまうかもしれません。しかし、ブランドの立ち上げはスタート地点であり、ここからが本番です。スタートダッシュを成功させるために、しっかり準備をしておきましょう。
地域ブランディングの考え方まとめ
この記事では、地域ブランディングについて、人口を増やすためのブランディングと経済発展のためのブランディングに分けて紹介しました。
地域ブランディングは、地域と組織、そして住民とが一体になって進めるものです。関係者が多いため難しい側面もあるかもしれませんが、あわてずに腰を据えて、じっくり取り組んでいきましょう。
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