暗黙知の意味とブランディングにおける重要性
ブランディングで重要なのは、ブランドの骨組みをしっかり作り、育てていくことです。
ブランディングというとプロモーションをイメージする人も多いかもしれませんが、プロモーションは、ブランドを構築するうえでの要素の一つに過ぎません。
ブランディングの専門家は、ブランド構築の最初にまず暗黙知の掘り起こしを行います。暗黙知とは、従業員が業務の中で培ってきた経験やそこから得た知識の中でも、ドキュメントにして共有されることのない日常の経験や勘のようなもののことをいいます。なぜそれを掘り起こすかというと、暗黙知が実はブランドの強みや根本であることも多いからです。
そこでこの記事では、暗黙知とは何なのか、それをブランディングにどう活用するのかを解説していきます。多くの人に愛されるブランドを育てていくために、ぜひ参考にしてみてください。
暗黙知とは
企業の社員は、仕事を通じて多くの知識を積み上げています。それらは、例えばマニュアルや引き継ぎ資料などを作る際に明文化されて組織内にシェアされますが、実はそのようなときにも表に出てこないナレッジを、全員がそれぞれたくさん持っています。それが、暗黙知です。
暗黙知とは、顧客との日常的なやり取りの中で得た小さな情報や、長年の経験を通して養われた勘のように、説明するのが難しい知識や、本人が認識すらしていない意識などのことをいいます。反対に、情報として記録され、共有されるような知識のことを形式知といいます。
近年、暗黙知を引き出して明文化することの重要性が認識されるようになり、ナレッジマネジメントと呼んで取り組む企業が増えてきています。
暗黙知をブランディングで活用する目的
冒頭で、ブランド構築の最初にまず暗黙知の掘り起こしをすると紹介しました。それは、以下のような目的で行われています。
- ● ブランドの現状を理解するため
- ● ブランドの価値を見出すため
- ● ブランドの目指す方向を決めるため
ブランドの現状を理解するため
ブランドを構築うえで最初に行うべきことは、社内外におけるブランドの位置付けを正確に理解することです。ブランドが組織にとってどういう存在なのか、従業員がどう考えているのか、そして社会の中ではどういう存在なのか。
それを知るためには、販売数や売上高のように数値化できる定量データだけでなく、社員が日頃感じていることや顧客の声、営業に行ったときの肌感覚といった定性情報も必要です。なぜなら、同じ商品を売ったとしても、それを顧客が値段を理由に購入したのか、営業担当の力に押されて購入したのか、どうしてもほしくて購入したのかといった理由によって、顧客にとってのブランドの位置付けが変わるからです。
ブランドの現状を理解するためには、このように資料を見ても載っていない情報や、会議では発表されない顧客の声を引き出すことがとても重要です。
ブランドの価値を整理するため
顧客に選ばれるブランドは、顧客にとって価値のあるブランドです。しかしその価値は、企業側が考えるセールスポイントと一致しているとは限りません。
どんな顧客が自社ブランドのどこに価値を見出して購入しているのか。それを一番よく知っているのは、現場で顧客の声を聞いている販売員かもしれませんし、購入後の顧客と接するカスタマーサービス担当者かもしれません。彼らが顧客との何気ない会話の中で得た知識を引き出すことが、ブランドの価値を整理するためには必要なのです。
ブランドの目指す方向を決めるため
ブランドのゴールや目指す方向を決める方法は、大きく分けると2つあります。1つ目は、経営陣やブランディング担当が決めて組織内に伝える、いわゆるトップダウンといわれる方式。そして2つ目は、現場の声を吸い上げ、それを反映させる方式です。
後者の方式で進めるのであれば、まずは社員同士がお互いの思いを共有し、足並みを揃える必要があります。ブランドを育んでいる人々は皆、「ブランドをこうしたい」という考えを持っていて、そこにはそれぞれの経験や背景が反映されているからです。
表に出ていない社員の思いに、実はブランドの強みが隠れていたということもよく起こります。ただし、本人も気づいていないその思いを引き出すのは容易ではないので、それをうまく聴ける技術があるかどうかが鍵になるでしょう。
暗黙知を引き出す方法
上述の通り、近年、ナレッジマネジメントに取り組む企業が増えています。しかし実際には、導入してみたもののうまくいかなかったという声を聞いたことがある人も多いでしょう。その原因の一つに、暗黙知をうまく引き出せないということがあります。暗黙知を引き出すためには、適切な質問をして、さらにその回答を明文化する必要がありますが、それは誰もが簡単にできることではないからです。だからこそ、これまで表に出てきていなかったのです。
暗黙知を引き出す方法の一つに、ワークショップを実施してそこで意見を出し合うというものがあります。うまく進行すれば色々な人の様々な考えがあぶり出されるため、よく行われている方法です。ただし、単に意見を言い合うだけでなく、無意識に考えていたことを言葉にしてもらうのが目的なので、上手にファシリテーションできる人がいるということが条件になるでしょう。
ファシリテーションについては下記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
この記事では、暗黙知の意味とブランディングでの重要性について解説しました。
- ● 暗黙知とは
- ● 暗黙知をブランディングで活用する目的
- ● 暗黙知を引き出す方法
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