社是とは?読み方や意味、社訓との違いと作り方
社是は、企業を経営するうえで大切にしたい指針を表現しているものです。 しかし、社是という言葉を聞いたことはあるものの、具体的にどういうものなのかがわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、社是とはどういうものなのか、どのように作るのかを、具体的な例を挙げて紹介します。持続的に成長する強い企業を作るために、ぜひ参考にしてください。
社是とは
社是とは、企業が経営活動を行ううえで最も大切にしている価値観や基本的な方針のことを指します。読み方は「しゃぜ」です。
社是の「是」には、「道理にかなっている」「正しい」という意味があります。つまり、会社として何を「正しい」と考え、どのような姿勢で事業を展開するかを端的に示すものが、社是です。
社是の具体例
多くの大企業が社是を策定している一方で、「言葉を聞いたことはあるけれど、具体的に何のことかわからない」「どういうものなのかを知りたい」という方も多いのではないでしょうか。 そこで、具体的な企業の社是を見てみましょう。
私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。
私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。
私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい
わが社は、「愛の精神の実践」を経営の基本とし、人々の幸福と生活の向上に寄与する。
社是は、このように、企業が大切にしていることをわかりやすい言葉で表現されているのが一般的です。
社是と社訓、企業理念、経営理念、クレドとの違い
社是についてなんとなく理解できたけれど、社訓などとの違いがわかりにくいという方も多いかもしれません。そこで、それぞれとの違いをまとめて紹介します。
社是と社訓の違い
社訓とは、従業員の行動指針や心得を簡潔に表現したものです。従業員一人ひとりが日常業務でどのように行動すべきかを示しており、箇条書きなどの伝統的な文章形式で書かれていることが多いです。
社是と社訓の違いを整理すると、以下のようになります。
- ● 社是:「自社が何を正しいと考え、大切にしているのか」
- ●社訓:「従業員が日々の行動で何を心がけ、どのように実践すべきか」
(参考)社訓の具体例
一、ヤマトは我なり
一、運送行為は委託者の意思の延長と知るべし
一、思想を堅実に礼節を重んずべし
一、笑顔で元気よく挨拶せよ
一、約束を守れ、嘘はつくな
一、全てに感謝せよ
一、常に謙虚なれ
一、恥ずかしいと思うことはするな
一、努力を継続せよ、あきらめない努力は、信用を生み、信用は奇跡を生む
一、他人の喜びや悲しみを共有せよ
社是と企業理念、経営理念との違い
企業理念とは、企業の存在意義や社会における使命を示すものです。企業の基盤となる存在です。
経営理念とは、経営者の価値観や、事業をどのように進めていくのかを明文化したものです。企業理念を土台として作られており、経営者や従業員が業務の中で判断する根拠となるものです。
それに対し、社是は、自社が「正しい」と考える経営方針や主張を簡潔に伝えるもので、スローガンのように短く端的に表現されることが多いです。
整理すると、社是と企業理念、経営理念には、以下のような違いがあります。
- ● 社是:「自社が何を正しいと考え、大切にしているのか」
- ● 企業理念:「自社がなぜ存在しているのか」
- ● 経営理念:「どのように事業を展開していくのか」
企業理念や経営理念の詳細や具体例は、以下の記事で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
▶︎ 企業理念とは?目的や使われ方、経営理念との違いを解説 ▶︎ 経営理念とは?経営理念と企業理念の違いや例、作り方のポイントを解説
社是とクレドの違い
クレドとは、ラテン語で「信条」や「約束」を意味する言葉で、企業が大切にする価値観や行動規範を、従業員向けに示すものです。行動指針などを書いた「クレドカード」を社員が常に携帯し、業務に活用している企業もあり、従業員が「クレド」という名前を意識せずに毎日目にしているケースも多いです。
社内に浸透しているクレドの例として知られる、楽天グループ株式会社の「成功のコンセプト」を見てみましょう。
常に改善、常に前進
Professionalismの徹底
仮説→実行→検証→仕組化
顧客満足の最大化
スピード!!スピード!!スピード!!
覚えやすく、具体的な行動に反映させやすいのが、クレドの特徴です。名札の裏側に書かれていたり、社内に掲示されていたりする例も多いです。
社是とクレドの違いを整理すると、以下のようになります。
- ● 社是:「自社が何を正しいと考え、大切にしているのか」
- ● クレド:「従業員が日々の行動で何を大切にし、どのように実践すべきか」
<社是との違い:まとめ>
ここまで紹介したものを表にまとめて紹介します。これらを整理して一つひとつ検討することで、企業の基盤や方針がしっかり定まっていくでしょう。
内容 | 対象 | |
社是 | 自社が何を正しいと考え、大切にしているのか | 社内外 |
社訓 | 従業員が日々の行動で何を心がけ、どのように実践すべきか(心得・倫理観) | 主に社内 |
企業理念 | 自社がなぜ存在しているのか | 社内外 |
経営理念 | どのように事業を展開していくのか | 社内外 |
クレド | 従業員が日々の行動で何を大切にし、どのように実践すべきか(具体的な行動指針) | 主に社内 |
社是を作る目的・意義
企業は、なぜ社是を作るのでしょうか。その目的は、大きくわけると3つあります。
- ● 経営の軸を明確にする
- ● 社員の行動や意識の統一を図る
- ● 社外に対して企業の姿勢を伝える
経営の軸を明確にする
社是を作る第一の目的は、経営者が企業としての基本的な価値観や方針を見失わず、一貫性のある意思決定を行うための指針を明示することです。社是があれば「ぶれない軸」を持てるため、長期的な視点で一貫性のある判断ができるようになります。
従業員の行動や意識の統一を図る
第二の目的は、従業員が日々の業務の中で何を優先し、どのような姿勢で行動すべきかを、組織全体に共有することです。
組織内には多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材が集まっているため、共通の指針がないと、組織としての一体感が失われる可能性があります。社是は、その統一感を生む重要な役割を果たします。
社外に対して企業の姿勢を伝える
第三の目的は、顧客や取引先、投資家などに対して、企業の価値観を伝えることです。 社外に対して企業の姿勢を伝えることで、企業の価値を高め、信頼構築やブランディング強化につなげることができます。
社是の作り方
ここからは、具体的に社是をどう作れば良いのかを解説します。社是を作るうえで重要なのは、以下の3つのポイントです。
- 1. 企業が大切にしている価値観や考え方の軸を整理する
- 2. 誰でも理解できるような、簡潔でわかりやすい表現にする
- 3. 社内外の人が共感できる内容にする
1. 企業が大切にしている価値観や考え方の軸を整理する
まずは、企業が「正しい」と考え、大切にしていることは何なのかを明らかにすることから始めます。
企業理念や経営理念を確認し、企業の基盤や軸を正しく整理したうえで検討しましょう。
2. 誰でも理解できるような、簡潔でわかりやすい表現にする
特にルールはありませんが、文字を読んだだけで理解できるようにわかりやすく作るのが望ましいとされています。誤った解釈をされないよう、的確に表現することも大切です。
3. 社内外の人が共感できる内容にする
社是を単なる「標語」で終わらせず、組織を動かし事業を望ましい方向に導く存在にするためには、従業員や社会の共感を得られ、具体的な行動につながるものにする必要があります。
そのために、経営層だけでなく、現場の従業員も一緒に社是を検討する例もあります。トップダウン方式ではなく、従業員を巻き込んで作ることで、より従業員にとって身近な言葉でわかりやすい表現にまとめられるようになるでしょう。この方式で策定する場合は、企業理念や経営理念をよく理解している人が適切にファシリテーションを行うことも重要です。
まとめ
この記事では、社是とは何か、どのようなポイントを大切にして作るべきなのかを解説しました。
- ● 社是とは
- ● 社是と社訓の違い
- ● 社是と企業理念、経営理念との違い
- ● 社是を作る目的・意義
- ● 社是の作り方
社是という言葉は、一般にはなじみが薄いかもしれませんが、企業にとって経営の基本方針を示す重要な役割を担っています。この記事を参考に、社是の策定に取り組んでみませんか。
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