経営理念とは?経営理念と企業理念の違いや例、作り方のポイントを解説
経営理念は、経営者の価値観や事業の方向性を示す重要な指針です。経営陣や従業員が日々の業務の中で判断すべき場面において、優先順位を決めたり、正しい選択をしたりするための拠り所となるものであり、事業を正しく導く指針です。
この記事では、経営理念とは何か、企業理念との違いや例、作り方などを紹介します。これから経営理念を作ろうとしている方や、経営理念を作るべきかと迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
経営理念とは
経営理念とは、経営者の価値観や事業運営方針を明文化したものです。簡単にいうと、企業がどのように事業を展開するのかを示しています。組織の成長と発展を導く羅針盤としての役割を果たしており、従業員が事業において判断する際の基準となるものです。
経営理念と企業理念の違い
企業理念とは、会社の存在意義や社会的使命を示すものです。組織全体の価値観や目指すべき方向性を示すもので、時代が変わっても変わることのない、その企業の根幹となる思想です。
経営理念と企業理念には、以下のような違いがあります。
- ● 経営理念:「どのように事業を展開していくのか」
- ● 企業理念:「なぜ会社が存在するのか」
経営理念とビジョンの違い
ビジョンとは、企業が目指している将来像や理想像を指します。従業員が何を目指して仕事をすれば良いのかをイメージできるように、具体的な言葉を使って示します。
経営理念とビジョンには、以下のような違いがあります。
- ● 経営理念:「どのように事業を展開していくのか」
- ● ビジョン:「どのような未来を目指すのか」
経営理念と経営戦略の違い
経営戦略とは、経営理念を実現するための具体的な方針や計画の大枠を示すものです。環境や市場の状況、経営状態を見ながら戦略を立てていきます。
経営理念と経営戦略は、以下のような違いがあります。
- ● 経営理念:「どのように事業を展開していくのか」
- ● 経営戦略:「どのように行動を計画し実行するのか」
経営理念と社是との違い
社是とは、企業として大切にする価値観や基本的な方針を簡潔に示したものです。経営理念が企業の事業展開の方向性を表すのに対し、社是はその根底にある価値観や思想を表現しています。
経営理念と社是には、以下のような違いがあります。
- ● 経営理念:「どのように事業を展開していくのか」
- ● 社是:「何を企業の基本的な価値観とするのか」
すべてをまとめると、以下のようになります。
内容 | |
経営理念 | どのように事業を展開していくのか |
企業理念 | なぜ会社が存在しているのか |
ビジョン | どのような未来を目指すのか |
経営戦略 | どのように行動を計画し実行するのか |
社是 | 何を企業の基本的な価値観とするのか |
経営理念の例
では、実際に経営理念とはどういうものなのかを見てみましょう。例として、実際に日本の企業が公開している経営理念を紹介します。
ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献します。
情報革命で人々を幸せに
~ ITと通信の融合で、より豊かでより幸福な未来を切り開く ~
我が社は、限りある大地の最有効利用を広範囲に創造し、実践して社会に貢献する
「いつも、人から」
タカシマヤグループは、「人を信じ、人を愛し、人につくす」こころを大切にし、社会に貢献します。
生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって地域文化の向上・発展に寄与する
これらの経営理念は、各社が大切にしている価値観や目指すべき方向性を明確に示しています。どれも短い文章ですが、経営陣や従業員が何を基準に判断し、行動すべきなのかが明確に伝わる内容です。
経営理念の形に決まりはないので、どのように作成しても構いません。重要なのは、経営陣や従業員がどう行動したら良いのかがはっきりわかるように作成することです。
経営理念の効果・役割
経営理念は、企業に以下のような効果をもたらします
経営の意思決定を導く
経営理念は、企業の経営判断を導く重要な指針です。
事業戦略を決めるときや、新規事業の展開を検討するときには、経営理念に従って検討すれば、どのように事業を進めていくべきかが明確になります。日々の経営判断において迷いが生じた場合には、経営理念に立ち返ることで、適切な判断基準を見出すことができます。
経営理念は、経営の意思決定における基軸となる存在です。
従業員の判断の基軸となる
経営理念では、経営陣が事業をどのように展開するのかを示すものです。つまり、従業員が日々の業務で何を重視すべきかを考える際に、正しい方向性を示すものでもあります。
仕事をするうえで、何を優先し、どのように判断すべきかの基準になるのが、経営理念です。
経営理念と企業理念の関係
企業理念は、いわば企業の土台であり、経営理念はそれを実現するための経営方針や行動指針です。経営理念と企業理念は、以下のような関係にあります。
<企業理念が上位にある>
企業理念は、企業の存在意義や根本的な価値を示すものです。企業を経営するうえでの基盤になります。
<経営理念が企業理念を実現するための方針を示す>
経営理念は、企業理念をどのように実現するかを具体的に示すものです。これは経営の方針や行動の基準になります。
たとえば、以下のような関係です。
- ● 企業理念:「持続可能な未来を創造する」
- ● 経営理念:「環境負荷の少ない製品を開発し、世界中に普及させることで、持続可能な社会に貢献する」
「持続可能な未来を創造する」という企業理念を実現するために、「環境負荷の少ない製品を開発」という経営理念が作られています。経営理念は、このように企業理念の基盤のうえに作られるのが一般的です。
経営理念の作り方
経営理念の作り方に決まりはなく、各社がそれぞれの方法で作り上げています。ここでは、経営理念を作るにあたっておさえたいポイントや、各社の工夫について紹介します。
経営理念は誰が作る?
経営理念は経営者の思想を示すものなので、経営陣が作るのが基本です。
ただし、従業員の考えを反映させたい場合や、従業員が理解しやすいものを作りたい場合に、各部署から従業員を集めてチームを編成し、皆で作り上げるケースも多いです。
経営理念を作る際に気をつけたいポイント
従業員が理解し、日々の業務で参考にできる経営理念を作るためには、以下のポイントをおさえると良いでしょう。
- ● 企業理念を基盤とする
- ● 従業員が理解しやすい言葉で表現する
- ● 短く簡潔にまとめる
経営理念は、できるだけ具体的でわかりやすいのが理想です。以下の例を見てください。
<従業員が活用しにくい経営理念の例>
社会に貢献する企業を目指す
内容が具体的でないため、これだけを見ても従業員はどう動いたら良いかわかりません。一方、以下のように作れば、環境に優しい製品を作ることが使命だと理解できます。
<従業員が活用しやすい経営理念の例>
環境に優しい製品を多くのお客様に届け、地域社会と共存する
経営理念を従業員に活用してもらうためには、具体的でわかりやすい文章にすることをおすすめします。
まとめ
この記事では、経営理念について解説しました。
- ● 経営理念とは
- ● 経営理念の例
- ● 経営理念の効果・役割
- ● 経営理念と企業理念の関係
- ● 経営理念の作り方
経営理念は、企業の方向性を示し、従業員が判断や行動をする際の指針となります。自社の特徴や使命を反映した、わかりやすく具体的な経営理念を作ることで、企業全体に一貫性と共感をもたらすことができます。
ぜひこの記事を参考に、経営理念の策定や見直しに取り組んでみてください。
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