まずブランド戦略でデザインするのはロゴではなく接点?

インナーブランディング、アウターブランディングイラスト:亀谷

『シーズン2、亀谷がひもとくブランディング』も、早くも第3回を迎えました。「ブランド戦略」について、今までヒントになるようなお話はありましたでしょうか?少しでもみなさまのご参考になれば幸いです。

さて、今までお話して参りました「ブランド戦略」については、今回が最終回になります。前回お話いたしました「志を明らかにしよう」では、羅針盤ともいえる企業理念についてのお話をさせていただきました。今回はそれを社員やお客様に伝えていくことの大切さについてのお話です。

まずインナーブランディングをデザインしてみよう!

それでは、ブランド戦略の2つ目「接点をデザインしよう」についてお話します。

既にお気づきかと思いますが、志は誰かに届けないと何も起きません。まずは、身内である社員に伝えましょう。と言いますのも、商品とかサービスなどの価値を生み出すのは社員だからなのです。

あれっ?社員なの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実は経営者ではないんですね。社員が自社の志を理解しているとだいたい同じ方向を見て仕事ができるので、共同で新たな価値を生み出してくれるし、その質も高まります。ちょっと考えてみれば当たり前過ぎるお話ですね。

でも、その逆を考えて見ると「そうなんだよ」と頷かれる方が意外と多いのではないでしょうか。例えば、あちこちでバラバラなことをしていて無駄が多いとか、クレームが多いとか、自分のテリトリーだけの最適化を考えていて会社全体の視点を欠いているとか、そもそも指示待ちの受動的な社員が多過ぎるとか、こうした一般的ではありつつも当事者にとっては深刻極まりない課題は、そもそも志がないのか、あってもきちんと伝えていないことに原因があるのです。

志を伝えるには、まず志と社員をつなぐ接点を考えなければいけません。
既存の接点では何が問題なの? そもそも接点が皆無じゃないの? こちら側から言いたいことだけ言い放っているだけでは? という問題を発見し、接点の一つ一つとそれらが集まった全体像を設計してみることが、接点をデザインするということなのです。

みなさんは、はじめに「デザイン」と聞いてロゴとかパッケージとかをイメージされたのではないでしょうか? そういうデザインは弊社のような専門家に任せた方が合理的です。その手前にある、接点の個別及び全体設計については、自社の問題をよく知るビジネスパーソンが行うべきデザインなのです。

そして、できるだけその美しさにこだわっていきましょう。接点が数珠のようにつながって、相互に連動しあっている美しいデザインは、社員にとって気持ちが良いでしょうし、良い施策に違いないからです。ちなみに、こうした社員向けの接点をデザインして実行することを、私たちの業界ではインナーブランディングと呼んでいます。

さて、この接点をデザインするということは、当然のことですが社員だけではなく消費者やお取引先にも有効です。ホームページやパッケージや店舗のデザインは、大雑把に言うとそれぞれたった一つの接点に過ぎません。その前後にも接点はあるでしょうし、新たに生み出すべき接点もあると思います。

「昔やってみたけど、上手くいかなかった」というお話を時々お伺いすることがありますが、それは時期尚早であったか、全体デザインに問題があったとうケースがほとんどです。やり直してみれば良いと思いますし、私はいつもそうやってご提案しています。

接点をデザインする必要性、ご理解いただけたでしょうか?
そして身内である社員向けに、消費者やお取引先といった外向けに、美しい接点を通して志や、志を背景にした価値をお伝えできたら、果たして何が起きるのでしょうか?

それは、すなわちファンが生まれるということなのです。

ブランド戦略のまとめ 2つのポイント

ブランド戦略の究極の目的は社員にも消費者にもファンになっていただくということです。つまり、「一緒にやっていきたい」とか、「この会社の考え方や、やっていることが好き」などの気持ちを商取引に入れるということです。

そして、ファンづくりのポイントは2つありました。 一つ目は志をハッキリさせる。二つ目は接点をデザインして志を伝えるでした。この2つをぐるぐる回してスパイラルアップさせていくと、それが『ブランド戦略』になります。

「結構大変そうだな」と思われましたか? それとも「面白そうだな」と思われましたか? 面白そうだなと思われた方もそうでない方も、是非一緒にやってみましょう。目的も手法論も単純ですが、実際にやるのは大変なこともありますから。それなら断然、仲間がいたほうが良いと思いませんか?

次回はネーミングの際の考え方やポイントをご紹介したいと思います。