ブランドストーリーとは?作り方やその重要性、伝え方の基本を解説
ブランディングの一環として、ブランドストーリーを作成する企業が増えています。 この記事を読んでいる皆さんの中には、
「ブランドストーリーを作りたいけれど、何を伝えれば良いのか分からない」
「自社にはたいした話がないので、ブランドストーリーを作れない」
と悩んでいる人も多いでしょう。もしかしたら、
「商品を売るのに、ストーリーなど必要ない」
「大切なのは、ストーリーではなく技術や商品の機能で差別化することだ」
と考えている人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、そのような皆さんに向けて、ブランドストーリーとはどういうものなのか、なぜ多くの企業が取り入れているのかを紹介していきます。具体的な作り方も解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ブランドストーリーとは
ブランドストーリーとは、一言でいうと、企業や製品の価値を消費者に伝えるために作成するストーリーのことをいいます。
一般的には商品誕生ストーリーのようなものがイメージされることが多いですが、ブランドストーリーとはそのような物語だけを指すものではありません。自社のことを消費者に理解してもらえるようなストーリーを作成し、発信していくのが理想の形です。
ブランドストーリーを作成する目的
ブランドストーリーには企業の色々な思いが込められていますが、共通する最終目的は「売上を伸ばすこと」にあるでしょう。ブランドにまつわるストーリーを伝えることで消費者の共感を集め、指名買いされるブランドに育てるということです。
指名買いとは、複数のブランドを比較して商品を選ぶのではなく、最初から決めているブランドで購入することをいいます。例えば、「寒くなってきたから暖かいインナーを買おう」と思った時に、迷うことなくいつもと同じブランドで購入する人も多いかもしれません。車を買い替えようと思った時に、各メーカーを回らずいつものディーラーで新車を選ぶ人も多いでしょう。それが、指名買いです。
指名買いされるようになると、他社との差別化や、不必要な価格競争をする必要がなくなります。指名買いは、企業にとって理想の形なのです。
なぜストーリーにするのか
人は、感情が動かされると行動します。そしてお客様は、感情を動かされると商品を購入します。もしかしたら、「これが必要だから」「機能が良いから」という理論で購入しているように見えるかもしれませんが、実はその前に感情が動かされていて、そこに理論で理由をつけて購入しているのです。つまり、自社商品を買ってもらうためには、お客様の感情を動かす必要があるということです。
ブランドストーリーは、消費者の感情を動かすのに適しています。ストーリーにすると、ただ単に数字や事実を並べるよりも人々の共感を得やすく、記憶に残りやすくなるからです。
例として、以下の2つの文章を比べてみてください。
「伸縮性能を20%高め、体にフィットしやすいようデザインされた子供用スポーツウェア。新開発の○○という冷感速乾素材を使用。」
「これは、スポーツで今よりもっとパフォーマンスを高めたいキッズアスリートのためのウェアです。当社の創業者が、自身の子どもがサッカーに打ち込んだ経験から『成長期の子どもたちの体を守り、パフォーマンスを高めるウェアを作りたい』という思いで開発しました。動きが妨げられないよう伸縮性能の高い生地を取り入れ、大きめのウェアを着てももたつかないようにフィット感にもこだわりました。夏の暑さから体を守るため、速乾性の高い接触冷感素材を使っています。私たちは、スポーツウェアを通して頑張る子どもたちを応援しています。」
前者と後者では、消費者に対する訴求方法が大きく異なります。前者のような簡潔な説明が必要な場面もありますが、後者のようなストーリーがあると、より消費者の共感を得やすく、説得しやすくなるでしょう。それが、ストーリーにする理由です。
ブランドストーリーで何を伝えるのか
ブランドストーリーで伝える内容は、自社を創業した目的や想い、企業の価値観、商品開発ストーリーなど、企業によって様々です。それらを一つの物語としてWebサイトに載せることもあれば、ストーリーを短い言葉や映像などで表現することもあるでしょう。
どのようなストーリーにも共通しているのは、読んだ人の共感を得られるものにすること、そして、ストーリーに触れた人が製品の価値や購入する理由を見出せるようなものにすることです。伝えたいことはたくさんあるかもしれませんが、何が消費者の感情を動かすかを見極めることが重要です。
ブランドストーリーをどのように伝えるのか
ブランドストーリーは、CMだけ、Webサイトだけのように一つの方法に限定して発信するものではありません。消費者との接点を多く持ち、その全ての接点で発信して伝え続けることで、その価値が高まっていきます。
ブランドストーリーの伝え方は色々ありますが、代表的なのは以下の2つです。
- ● ブランドストーリーをそのまま文字にして伝える
- ● ブランドストーリーを短い言葉や映像に凝縮して伝える
ブランドストーリーをそのまま文字にして伝える
ストーリーを作成し、それをそのまま文章にして読んでもらうというのは、Webサイトでよく見かけるブランドストーリーの形です。このタイプのストーリーで必ず行いたいのは、読んだ人の感情を動かすポイントを意図的に入れていくことです。
例えば、商品誕生ストーリーを書くとしましょう。商品誕生ストーリーというと経緯を時系列に並べていくというイメージがあるかもしれませんが、単に時系列で説明するだけで共感を得るのは難しいでしょう。読んだ人に共感してもらい、商品を購入したいと思ってもらうためには、感情を動かすポイントを意図的に入れていく必要があります。
そのためによく取り入れられるのが、失敗した話を盛り込むという手法です。輝かしい成功話よりも、失敗話の方が共感を得やすいからです。自社製品の素晴らしさを訴える前に、まずはそのようなストーリーで消費者を惹きつけるように作ると良いでしょう。
ブランドストーリーを短い言葉や映像に凝縮して伝える
上述の通り、ブランドストーリーは複数の場所で発信するのが理想です。そのためにはそれぞれの場面に合わせたものが必要になるため、場合によっては短い言葉や映像に凝縮したものも必要になるでしょう。
短いものは最初から短く作るのではなく、長いブランドストーリーを作成してから、そのエッセンスを凝縮して作ります。短い中に消費者の感情を動かすポイントを入れる必要があるため、長いものよりも作るのが難しいかもしれません。じっくり時間をかけて考えてみることをおすすめします。
ブランドストーリーの作り方
ブランドストーリーを作る方法に決まりはありませんが、ここでは以下の手順での作り方を紹介していきます。
- 1. コンセプトを決める
- 2. エピソードを洗い出す
- 3. 全体構成を決める
- 4. ストーリーを作成する
1. コンセプトを決める
最初に、コンセプトを決めていきます。わざわざコンセプトまで作らなくても良いのではと思われるかもしれませんが、ブランドストーリーは単にストーリーを時系列に並べるのではなく、読んだ人にどういう感情を抱いてもらいたいかを決めて作るものなので、設計がとても重要なのです。
- ● 何についてのストーリーなのか
- ● 何のためにストーリーを作るのか
- ● 誰に読んでもらいたいのか
- ● 読んだ人にどういう感情を持ってもらいたいのか
このようにコンセプトを決め、それに沿ってストーリーを作っていきます。
2. エピソードを洗い出す
次に、創業者、経営者、社員など関係者が持っているエピソードを洗い出していきます。ここでのエピソードは、人々が驚くような特別なものである必要はありません。会社を創業する過程、商品を開発する過程でこんなことを行った、その時こう感じたといった小さなことを挙げていくのです。
ただし、いきなり「エピソードを聞かせてください」といってもなかなか話してもらえないので、上手に引き出せる聞き手やファシリテーターが進めていくのが理想です。アンケートを配布して各自に書いてもらうという方法でもある程度は集められるかもしれませんが、「取り立てて話す必要はないだろう」と思うようなエピソードがブランドストーリーの鍵になることもありますので、適切にヒアリングできる人をアサインするのが理想です。
3. 全体構成を決める
全体構成は、文章を作るうえでの設計図になるものです。集めたエピソードを整理し、コンセプトや企業理念と照らし合わせて、ストーリーをどのように構成するかを決めていきます。
実はブランドストーリーには色々な型があるため、どの型にするかを決めてから全体構成を決めるのが本来の手順です。しかし型を決めるのは容易ではないため、もし取り組むのであれば専門会社に相談すると良いでしょう。
4. ストーリーを作成する
いよいよストーリー作成です。全体構成がしっかり決まっているので、それに沿って書いていきます。
ストーリーは、一つだけに絞らなければならないわけではありません。内容が全体構成に合っていて、一貫性があれば、複数のものを作って色々な場所で消費者に伝えると効果も高まるでしょう。
文章の書き方にもコツがありますが、最初から色々考えすぎると読む人に伝わらなくなってしまうので、まずは思いをしっかり込めて、全体構成から逸れないように書くようにしましょう。
まとめ
この記事では、ブランドストーリーについて解説しました。
- ● ブランドストーリーとは
- ● ブランドストーリーを作成する目的
- ● なぜストーリーにするのか
- ● ブランドストーリーで何を伝えるのか
- ● ブランドストーリーをどのように伝えるのか
- ● ブランドストーリーの作り方
ブランドストーリーは、必ず作らなければならないものではありません。しかし、作ることでブランドの価値を高め、売上向上に成功している事例も数多くあるため、特に海外ブランドではよく取り入れられています。
どの会社にも、素敵なストーリーが必ずあります。それを引き出して、あなたの会社ならではのストーリーを作ってみませんか。
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