ナラティブとは?意味やストーリーとの違いを紹介

ナラティブとは?意味やストーリーとの違いを紹介

ブランディングやマーケティング、PRに「ナラティブ」を取り入れる企業が増えてきました。しかしその一方で、

「ナラティブの意味が分かるようで分からない」
「ストーリーとどう違うの?」

と思っている人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ナラティブとは何なのか、ストーリーとはどう違うのか、ナラティブはどう作ると良いのかを、ブランディングやマーケティングの視点で解説していきます。

ナラティブとは

ナラティブ(narrative)という言葉の意味を調べると、「物語」「語り」と書かれていることが多いでしょう。「ナレーション」「ナレーター」という言葉がその派生語であることも、よく知られています。

ナラティブの語源は物語論や文芸理論といった学問にあり、医療分野でその考え方が活用されることもあります。そして近年は、ビジネスの場面で見聞きする機会が増え、新たに取り入れようという動きが多くの企業で見られるようになってきました。特に、ブランディングやマーケティングの新しい手法として検討する企業が増えています。

ナラティブとストーリーの違い

この記事を読んでいる皆さんの中には、「ナラティブとストーリーの違いが分からない」あるいは「ナラティブとストーリーは同じだと思っていた」という人も多いのではないでしょうか。ナラティブとストーリーが混同されてしまうのは、どちらも訳すと「物語」になってしまうためでしょう。

ここで、ナラティブとストーリーの違いを整理しておきましょう。以下の3つの視点から解説していきます。

  • ● 物語の中心人物(主人公)
  • ● 物語の時間軸
  • ● 物語をつくる人

物語の中心人物(主人公)

ストーリーは、例えば「新商品の開発ストーリー」のような形で以前からビジネスにおいて活用されてきました。その物語は事実を客観的な視点で描いたものであり、主人公は会社の創業者や商品開発に携わった人々であることが多いでしょう。消費者は、一人の読者・視聴者という位置付けです。

一方、ナラティブでは語り手が物語を作っていくという手法がとられており、その中心に置かれているのは生活者、つまり読者・視聴者です。企業が伝えたいことを、生活者を主人公にした物語の形にして伝えていくのです。

語り手が主人公なので、読者・視聴者が主人公に自身を重ね、その商品を使っている自分を想像するようになります。すると、商品を使うことが「自分ごと」になるためイメージが膨らみ、最終的に「買いたい」という気持ちにつながりやすくなるのです。

物語の時間軸

ストーリーには結末があり、その結末に至るまでの過程が物語として描かれます。前出の開発ストーリーの例でいうと、結末は新商品の開発・発売であり、物語はそこに至るまでの過程です。

一方ナラティブでは、これから起こり得ること、つまり未来を描くという点が大きく異なります。例えば、その商品を手に取ることで消費者の生活が現状と比較してどう変わるのか、場合によっては、それによって社会はどう変わるのかという視点で物語を描いていくのです。

物語をつくる人

ストーリーは、企業が作り、伝えたい方法で一方的に伝えるものです。 しかしナラティブの場合は、読者・視聴者が未来をイメージすることで完成する物語であり、読者を巻き込んで作られるものです。言い換えると、企業が物語の骨子を作り、読者・視聴者が肉付けして進めていくのがナラティブであり、そこに決まった結末がないというのが特徴です。

ナラティブをビジネスで活用するには

ここまでの解説で、ナラティブとストーリーの違いが見えてきたでしょうか。ここからは、ナラティブを実際にビジネスで活用する際におさえておきたいポイントを紹介していきます。

事前に整理する内容

ナラティブを作るために、まずは以下の3点を整理しておきましょう。

  • ● どういう商品なのか
  • ● その商品を提供することで、消費者の未来がどう変わるのか
  • ● 企業はどのような価値を提供できるのか

どういう商品なのか

まずは、今回取り上げるのがどのような商品なのかを明確にして文字にすることから始めましょう。自社の商品なのだから、どのような商品なのかは当然分かっていると思われるかもしれませんが、文字にすることで改めて理解できるだけでなく、関係者間での齟齬が生まれにくくなります。

企業側からと消費者側からの両方から商品を見て、情報を整理しておきましょう。

その商品を提供することで、消費者の未来がどう変わるのか

次に、商品が未来をどう変えるのかを明確にします。ここはブランディング・マーケティングの方向性を決める重要な過程なのですが、表面に出てきていない、いわゆる暗黙知が潜んでいることが多いので、可能であればファシリテーターを置いて情報を引き出すのが理想です。

「これを買うとこのように便利に使える」というメリットだけでなく、「だから私の生活がこのように良くなる」という未来まで描けるようにするのがポイントです。

企業はどのような価値を提供できるのか

そして最後に、企業が提供できる価値を洗い出します。その商品によって、消費者の生活を現状からどう変えられるかという点を整理するのです。

企業の提供価値は、理解が曖昧だったり人によって考えが異なったりすることも多いので、明文化しておくことはとても大切です。それによって企業内でのぶれがなくなり、一貫したイメージを作り上げられるようになるでしょう。

ビジネスでの活用を成功させるためのチェックポイント

ここまで整理できたら、次の2点を確認しながら進めていきましょう。

  • ● 消費者が本当に求める形になっているか
  • ● 各タッチポイントでイメージにぶれがないか

消費者が本当に求めている形になっているか

ナラティブとは、「企業が伝えたいことを、生活者を主人公にした物語の形にして伝えていくこと」だとお伝えしました。そしてそれは、消費者が潜在的に求めているものであるという前提のうえに成り立つものです。

ナラティブの中心に置かれているのは、消費者です。どのような場面でも、それを念頭に置いてつくっていくことが重要です。

各タッチポイントでイメージにぶれがないか

人々は、企業や商品に対するイメージを持っています。そしてそのイメージは、タッチポイント(企業と顧客との接点)における体験の積み重ねで作り上げられます。それは、どこかのポイントでナラティブを語っていても、別のポイントで異なる体験をすればイメージが植え替えられてしまうということ。つまり、イメージを作り上げるためには全てのタッチポイントにおいて同じ体験を提供する必要があるということを意味しています。

ナラティブは、付け焼き刃のように作っても機能しません。企業の本質がどこにあるのかを見定め、そのベースの上に作っていくことが重要です。

まとめ

この記事では、ナラティブとは何なのかについて解説しました。

  • ● ナラティブとは
  • ● ナラティブとストーリーの違い
  • ● ナラティブをビジネスで活用するには

ナラティブは、広報や商品PRだけでなく、商品開発などにも活用されています。上述のように考えを進めることにより、必要な商品はどういうものなのか、それが本当に必要なのかが見えてくるからです。

ナラティブとは、ストーリーのように起こった過去を綴るのではなく、消費者が望む未来を考えて新しく描いていくものです。ゼロから作り上げるものなので、時には簡単に進まないこともあるでしょう。そのような場合は、ぜひ当社にお気軽にご相談ください。

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