伝えたいことを届けるコミュニケーションデザイン
『シーズン2、亀谷がひもとくブランディング』も、いよいよ最終テーマとなりました。
締めくくりはコミュニケーションデザインについてです。コミュニケーションデザインという言葉は、一般的にはロゴデザインやパッケージデザインと比べると、少しイメージしづらいかも知れませんね。
しかし、コミュニケーションデザインを考えることはとても重要です。なぜなら、伝えたい想いを乗せたロゴやパッケージを、伝えたい人にどう届けるか?伝達を補完するためのデザインだからです。今回、次回の2回に亘ってお届けいたします。
お客様とのタッチポイント(接点)をデザインすることの重要性
自分達の想いをロゴやパッケージに込めるのはとても大事なことです。しかしそれだけでは足りません。伝えたい人達に届けないと。
以前お話しした名刺も関係してきますが、届ける方法や場所というのは会社ごとに違うわけです。そのため、自社のお客様との接点がどこにあるのか、ということをカスタマージャーニーの視点から戦術的に考察することになります。
届けたいターゲットとの接点。以後、タッチポイントと呼びます。なぜ戦術的に考えないといけないのかというと、すべてのタッチポイントを高いレベルかつ均一にデザインをすることはお金と人員がかかり過ぎて誰にもできないからです。また画一的なデザインはそれぞれに異なる場の力学を無視することになり、対象者への訴求力を失います。ですから最重要タッチポイントはどこなのかを常に考えることが大事になります。計画に沿って抑揚をつけたデザインは伝えたいことを届ける役割を果たしてくれます。
タッチポイントは広範囲に及びます。名刺から始まって、冊子やポスターなどの印刷物、そしてビルや屋上のサインに至るまで。もちろんウェブとか動画とか、デジタルの世界も重要です。ひとつずつ挙げていたらキリがないですね。(笑)でも、面倒がらずに細かいところまで挙げていきましょう。
秘訣は自分たちが対象者の気持ちになって何度でもカスタマージャーニーをしてみることです。盲点というか本当に大事なところ、ブランド力を高めるタッチポイントが見えてきますし、独自のタッチポイントと重要順を把握することができます。なお、ブランド戦略を構成する一つが、このタッチポイントです。ちなみに他に3つありまして、コンセプト、ロゴ、社内浸透のインナーブランディングです。
ところで、最近は動画が流行っていて、グラビティーワンでもお手伝いすることが多くなりました。経験を積み重ねて思うのは、やっぱり何を伝えたいかをはっきりさせないと効果は低いということです。例えば企業理念を伝えたいということであれば、そこに込められている考え方や背景、その言葉に至った経緯などを、動画制作の方々にブリーフィングします。ですから、私が考えているイメージをそのまま表現してくれなんてことは絶対にしません。それは意味がないですから。
伝えたいことはこれ!でも伝える方法はどうしたらいいの?というところを、出来上がっていく過程に関与し、あくまでお客様の側に立って取りまとめていくというのが私のスタイルです。
サインシステム(看板)は効果的に見せてこそ価値がある!
サインシステムというのは看板のことですが、これもコミュニケーションデザインです。看板をデザインするというのは、中身に加えてどこにどんな風に掲示するのかというところも含めて考えます。
例えば昔の家紋で言えば、門にどんと大きく描くのか、小さくあちこちにつけるのか、入り口だけでいいのか。お城とか京都の街を歩いているといろいろ勉強になります。家紋は現代でいうところのロゴですから。
毎日どうやって武士や商人が、社員なりお客様が建物に入ってきて出て行くのか、その施設なりビルなり、それぞれに人の流れがありますよね?看板はそれぞれの目的がありますからね。どのくらいのサイズでどうやって見せたら効果的かを考えます。
町並みが全体的に二階建てくらいの地域に行くと、突然でんとビルがあって、ビルの上に看板を掲げていることがあります。例えば亀谷工業としましょうか。(笑)ああいうのはかなり遠いところからも見えるでしょう?あれを見て地域住民は、あそこに亀谷工業があるんだなって、ほぼ無意識に存在を確認するわけです。
またそういう会社は地元の名士だったりもして、タクシードライバーにも会社名を告げただけで行ってくれる。大事ですよね、看板って。
つまり、建物の上に掲げている看板って、自社はここにありますよという長距離サインの役割を担っています。社員であれば、親類縁者から、あそこで働いているんでしょう?と言われて、ちょっと誇らしかったりもします。もしブラック企業だったら、逆に心配されてしまうかもしれませんけど。(笑)
ただ首都圏でそれをやってもあまり意味がないですね。超高層ビルが乱立している中でいくら看板を掲げても、多くの場合は長距離から見えないですから。
重要なことは、届けたいターゲットとのタッチポイントを常に考えること、伝えたいことを明確にし、より効果的に伝えること。
今回は看板の持つ長距離サインとしての役割についてなどお話しました。次回は、方向を示すだけではない看板の果たす役割を例に、コミュニケーションデザインの肝をお話したいと思います。