事例紹介からひもとく、ブランディング

今回のシーズン3は、株式会社キンレイ様にご協力いただき、事例を交えつつ亀谷がどのように考え、どうやってブランディングを進めているかを共有させていただきます。

業界において独自なポジションを確立するにはどうしたら良いのか?経営の一施策であるブランディングの物語を共有することで、志の経営と競争戦略論を実践するヒントを感じ取っていただければと思います。

4回シリーズの1回目は、企業においてブランディングを行う背景について、その一例をお話します。キンレイ様と私たちの出会い編とも言えます。

鍋焼きうどん

冷凍食品を作るのではなく、美味しいものを作るというDNA

キンレイ様とのお付き合いは、もう10年くらいになります。弊社サイトのVOICE(https://gravity-one.co.jp/voice/kinrei)にもありますように、元々は大阪ガスのグループ会社でした。

大阪ガスがなぜ冷凍食品を?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、私は次のように理解しています。都市ガスは天然のものを精製してから私たちの家庭に届きます。海外から液体で運ばれた天然ガスを気化する時に生じる冷熱は、マイナス162度。「これを放っておくのは "もったいない"。何かに利用できないだろうか」と、全社を挙げて考え出されたのが、冷凍食品でした。単純に余った冷熱を使うだけではなく、便利に美味しい冷凍食品を提供することで食文化を広げつつ、都市ガスもご利用いただくという狙いがありました。

当時の冷凍食品のイメージといえば、あまり美味しくない、鮮度や保存料が心配なものでした。そんな時代だからこそ、美味しいものを作らなければ食べてもらえないじゃないかと、商品開発には、一流レストランやホテルのシェフから指導を受けていたそうです。冷凍食品の職人ではなくて、食の職人たちだったのがミソです。

じつは冷凍食品はきちんとした会社が冷凍すると雑菌が増えないので、保存料が要らない、とても体に良い、健康的なものなんです。ちなみに、ご家庭で冷凍しても同じようにならないし、どんどん劣化してしまいますから注意してください。

後にキンレイ様は独立した会社としてカーブアウトし、ファンドが株主になりました。最初のファンドの下、利益の拡大を求めるがあまり、原価を下げる方法を取りました。ムダを省くことはファンドが株主になった時の基本的アプローチだし、企業としても経営の健康診断や効率を高める機会にもなるので私は否定的な見方はしません。ですが、この原価下げの作戦はいただけません。利幅を稼ぐつもりが品質の低下を招き、美味しくないから売上も下がる。だからもっと手間を省いて品質も下げる。そして売れない…といったことがグルグル回る負のスパイラルを自ら招いてしまいました。

こういう価値で勝負していた企業がおかしなことになって客離れで大変みたいなことはよく目にしますが、当事者やファンも含めて残念な感じになってしまいます。そのファンドとは馬が合わなかったのでしょう。現社長の和田さんのお話では、当時はかなり疲弊していたと伺っています。その後、オリックスの投資部門が新たな株主になります。キンレイと私のファーストコンタクトは、ちょうどその時です。友人であり、キンレイのマーケティング支援をされていた柳田さんの紹介でした。ブランディングが必要なんじゃないか?と。

話を聞くことで見えてくる暗黙知

私は、「初めてブランディングをやってみようかな?」という方々には、ブランディングを売りませんし、実施しなかったらどんなに大変なことが起きるかといった脅しもしません。このブランディングというカタカナは、世の中で色々な解釈があって、誤解を招きやすいからです。なので、困っていることはなんですか?私が知っていることは共有しますよ、といった感じがちょうど良い温度だと思っています。キンレイ様とも同じような出会いでしたし、色々なお話を伺うところから始めました。

和田社長との面談は今でも印象深く記憶しています。当時は社長に就任されていませんでしたが、今後どうされていきたいかなどを1時間ほど語っていただきました。そこで馬が合ったのだな、と私は思っています。勝手に。(笑)

経営者だけではなく社員の方々も含めてインタビューを重ねていくと、それぞれに似たようなことをおっしゃっているのに、社内での共有が薄くなっているような状態でした。暗黙知をきちんと結んで横にしっかり繋げていくこと、自分たちのありたい姿について意思を統一することが最重要課題であると感じました。

さて、こうして最重要課題がはっきりしてきたところで、まずはBrainShuffle®というワークショップからキンレイ様のブランディングはスタートして参ります。
次回以降は、具体的にどのように進めていったのかをお話していきたいと思います。