ロイヤルカスタマーはなぜ重要?その特徴と増やし方を解説

ロイヤルカスタマーはなぜ重要?その特徴と増やし方を解説

ロイヤルカスタマーは、企業が最も大切にすべき顧客です。

「企業の売上の8割は、2割の顧客が作っている(80:20の法則)」といわれますが、ロイヤルカスタマーはその2割の中でも特別な存在です。そのため、多くの企業がロイヤルカスタマーへのサービスに重点を置いており、リソースと費用を投じています。

そこでこの記事では、ロイヤルカスタマーとはどのような顧客なのかを改めて整理し、ロイヤルカスタマーを増やして売上につなげるにはどうすれば良いのかを解説していきます。

ロイヤルカスタマーとは

ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドを信頼して愛着を持ち、継続して利用し続けてくれる顧客のことをいいます。自らが何度も繰り返し購入するだけでなく、人に勧めて新規顧客を連れてきてくれることもあり、様々な面で企業の売上に大きく貢献している人々です。

ロイヤルカスタマーは、ロイヤルティ(loyalty:忠誠、愛着)とカスタマー(customer)の2つの単語から成る言葉です。ロイヤル顧客と呼ばれることもあります。

ロイヤルカスタマーを増やす戦略

顧客は、一度購入しただけですぐにロイヤルカスタマーになるわけではありません。商品を使ったり、店舗を訪れたりする中でブランドに対して好印象を持つようになり、その積み重ねによって少しずつ信頼や愛着を育んでいくのです。

とはいえ、そういう顧客が増えていくのをただ待つだけでは、ロイヤルカスタマーはなかなか増えていかないでしょう。そこで取り組みたいのが、優良顧客に頻繁にブランドを利用してもらい、ポジティブな体験をしてもらうための戦略作りです。

優良顧客を増やし、ロイヤルティを高めていくための戦略は色々ありますが、ここでは、以下の3つを紹介していきます。

  • ● リピート顧客を増やす
  • ● アップセル・クロスセルで定着させる
  • ● ポジティブな体験を提供する

リピート顧客を増やす

リピート顧客(リピーター)とは、そのブランドを繰り返し利用している顧客のことをいいます。

新規顧客をリピート顧客に育てるのは、ロイヤルカスタマーを増やすための最初のステップです。自社ブランドを一度体験したことのある顧客に、もう一度使いたいと思ってもらうのです。 では、リピート顧客を増やすにはどうすれば良いのでしょうか。一つ例を挙げて考えてみましょう。

コンビニに行くと、ペットボトルの飲み物がたくさん並んでいます。あなたはその中から、どのような理由で1本を選ぶでしょうか。

味が好きだからという人もいるでしょうし、体脂肪に効果があると書かれているからという人もいるでしょう。しかし、その日の気分で選ぶ人も多いかもしれません。

リピート顧客を増やすためには、気分でたまたま選ばれるのを待つのではなく、競合製品が並ぶ中で理由があって選ばれるブランドにならなければなりません。成功している企業は、自社ブランドを選ぶメリットを明確にし、それが消費者に伝わるようにブランディングをしています。

今は、良い品さえ作れば売れる時代ではありません。しっかり戦略を立ててブランドイメージを築かなければ、消費者に見つけてもらえないのです。皆さんもこれを機に自社ブランドについて改めて分析し、消費者に見つけてもらい、選んでもらうための戦略を立ててみませんか。

アップセル・クロスセルで定着させる

アップセル・クロスセルという言葉を聞いたことがあるでしょうか。それぞれ、下記のような意味をもつビジネス用語です。

  • ● アップセルとは…ある商品を購入した顧客に対して、さらに高価格な商品の購入を促すこと
  • ● クロスセルとは…ある商品を購入した顧客に、関連商品の購入を促すこと
  • アップセル・クロスセルは、一般的には客単価アップを目的として行われるものですが、ここではロイヤルカスタマーを育てるという視点で考えていきます。

    皆さんは、アプリをアップグレードしたり、購入済み商品と相性の良い関連商品を追加購入したりしたことで、「使いやすくなって嬉しい」「お金はかかるけれどその価値は十分にある」と感じた経験をお持ちでしょうか。

    お金をかけた甲斐があったと満足できるのは、客単価アップだけを狙ったのではなく、顧客に喜ばれることを最優先にして設計されたアップセル・クロスセルだからです。それがどういうことなのか、一例を挙げて見てみましょう。

    例えば、皆さんがネット通販で充電器を購入したとします。外出先でパソコンが充電切れになるという困り事を抱えているため、出先でもすぐに充電できるように急速充電のタイプを選びました。その時に、あわせて急速充電ケーブルをレコメンドされたら、皆さんならどのような行動をとるでしょうか。

    「そうか、急速充電するためにはケーブルも急速のタイプに変える必要があるのか」と納得して、一緒に購入する人が多いのではないでしょうか。

    これは、クロスセルによって充電器の価値を高めている事例です。新しいケーブルを買わなければ急速充電ができないのであれば、今回のレコメンドは顧客の課題を解決するために必要不可欠なものだったということです。

    顧客が自社ブランドに対して何を求めているのか、そしてそれにどう応えるのか。そこを正しく見極められれば、アップセル・クロスセルによって顧客に更なる価値を提供できるようになるでしょう。その積み重ねが、ブランドへの信頼や愛着につながっていくのです。

    ポジティブな体験を提供する

    リピート顧客のロイヤルティを高めるためには、顧客との接点を増やして信頼を獲得し、愛着を持って継続利用してもらえる存在になる必要があります。

    そのための施策としてよく見られるのが、ロイヤルティプログラムです。上級顧客に対して特別なサービスを提供したり、「シークレットセール」や「ポイント付与率アップ」などの方法で購入を促したりするものです。

    ただし、「ロイヤルティを高める」という目的を達成するためには、セールやポイントなどのお得感だけで囲い込むことの是非について、よく検討する必要があるでしょう。そこでここからは、お得感ではなく「顧客にポジティブな体験を提供する」という本質的なサービスでロイヤルティを高めている事例を2つ紹介していきます。

    カフェのモバイルオーダー

    近年、先払い方式のカフェにモバイルオーダーが導入されるようになりました。モバイルオーダーとは、アプリを使って席で注文できる仕組みです。

    モバイルオーダーは、顧客が持っていた顕在的な課題と潜在的な課題の両方を解決したという点で注目されています。

    顕在的な課題は、レジの行列のストレスです。人気のカフェではレジが常に混んでいて、列に並んでようやくオーダーできたと思っても、受け取るためにもう一度待つのが普通です。混んでいるから仕方がないと思いながらも、ストレスを感じていた人も多いのではないでしょうか。疲れて休みたいからカフェに入ったのに、立って待たなければならないという点も不満になりやすいポイントです。

    潜在的な課題は、速やかにオーダーしなければならないというストレスです。やっと自分の番が来てメニューを見ながら選ぼうと思ったけれど、後ろに行列ができているため急いでオーダーしたという経験を持つ人も多いでしょう。慣れていないお店ではシステムもよく分からないため、手近なものをオーダーすることになったり、「サイズはどうしますか」と聞かれてもサイズの呼び方が分からず戸惑ったりすることも多いものです。

    しかし、モバイルオーダーの導入によってこの2つの課題は解決しました。顧客はレジに並ばず、席でゆっくりメニューを見ながらオーダーできるようになったのです。この取り組みは、ポイントや割引に頼らずにポジティブな体験を増やし、ネガティブな体験を排除することに成功した事例として広く知られています。

    航空会社のプレミアムラウンジ

    空港には、各航空会社のラウンジが用意されています。一般ラウンジや上級ラウンジ、最上級ラウンジのような形で会員グレードによってスペースが分かれており、最上級ラウンジは皆の憧れの存在です。ラウンジのランクが高くなるほど設備が良くなり、ラグジュアリーなサービスを受けられるようになるため、その権利獲得のためだけに飛行機に乗ってマイルを稼ぐ人もいるといわれています。

    プレミアムサービスを利用したいためだけにお金と時間を使って搭乗するという行動は、少しでも安く買いたいという一般的な消費者行動とは真逆のものです。航空会社のラウンジ施策も、ポイントや割引に頼らず顧客のロイヤルティを高めることに成功している素晴らしい事例といえるのではないでしょうか。

    まとめ

    この記事では、ロイヤルカスタマーとはどういう存在なのか、ロイヤルカスタマーを増やすために企業は何をすれば良いのかを解説しました。

    ロイヤルカスタマーを増やすためには、ポイントや割引などのお得感で顧客の行動を促すのではなく、ブランド自体の価値を高めて顧客の行動を促す施策が適しています。そのためには、自社の目的達成ばかり目を向けるのではなく、まずはどうすれば顧客に選ばれ、喜んでもらえるのかを分析してみることをおすすめします。顧客の方を向いた施策に取り組むことが、ロイヤルカスタマーを育て、増やしていくことにつながるからです。目の前の売上も大切ですが、長い目で見てロイヤルカスタマーを増やしていくことで、最終的には企業に大きな利益をもたらすことになるでしょう。

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