ファンマーケティングとは|ファンを増やし売上を伸ばす仕組み
ファンマーケティングという言葉を聞いたことがありますか。ファンマーケティングは、今の時代になくてはならないマーケティングの手法です。
ここ数年で、消費者の購買行動は大きく変わりました。店舗を回って商品を探すよりも、購入前にまず情報を調べたり、SNSで見かけた商品を選んだりするのが当たり前になっています。
この購買行動に大きく影響を与えているのが、各ブランドのファンです。ファンは、継続的に商品を利用して売上に貢献するだけでなく、SNSや口コミでブランドの魅力を発信し、新しい顧客を呼び込む役割を果たしています。つまり、ファンの存在がブランドの成長を左右するといっても過言ではありません。
この記事では、ファンマーケティングの基本から、従来のマーケティングとの違い、具体的なメリットを解説します。選ばれ続けるブランドをつくるための具体的な方法も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、ブランドのファンを増やすことで売上を伸ばしていくマーケティングの手法です。ブランドに強い愛着を持ち、売上に大きく貢献するファンは、ブランドを支える大切な存在です。
ファンマーケティングの「ファン」とは
ファンマーケティングのファンとは、ブランドの価値観や世界観に共感し、その商品を継続的に使う人や、応援する人を指します。たとえば、次のような行動が特徴です。
- ● 好きなブランドの新商品が出れば必ずチェックする
- ● 好きなブランドや商品をSNSで積極的に紹介する
- ● イベントに参加してブランドを盛り上げる
芸能人やスポーツ選手など、有名人のファンをイメージすると理解しやすいでしょう。たとえば、自分の好きな歌手が新曲を発表すれば発売日当日から聴き続け、SNSで積極的に情報を発信します。コンサートや試合があれば、抽選に当たるためにCDを複数枚購入することも珍しくありません。
ファンは、単に商品を利用している顧客にとどまらず、企業のマーケティング活動を支え、強いブランドを築くために欠かせない存在です。
ファンマーケティングが注目される理由
ファンマーケティングが注目されるようになったのは、SNSやインターネットの発展によって、口コミ情報が消費者の購買行動に大きく影響を与えるようになったためです。
優れた商品が市場にあふれている現代では、機能や価格を前面に出してもすぐに競合が追随するため、差別化が難しくなっています。そのため、ブランド自体の価値に共感し、強い愛着を持つファンの支えがこれまで以上に重要になっています。
ファンマーケティングとマーケティングの違い
マーケティングとは、ターゲットとなる層にアプローチし、商品が売れる仕組みを作ることです。それに対し、ファンマーケティングは、顧客の中でも特に「ファン」に注目し、「ファン」を増やして関係を強化することでシェアを拡大し、売上を伸ばす手法です。
ファンマーケティングとマーケティングの比較
まずは、ファンマーケティングとマーケティングの目的や位置付けの違いを整理しておきましょう。
項目 | マーケティング | ファンマーケティング |
目的 | 市場や顧客を理解し、新規顧客の獲得と既存顧客の維持によって商品が売れる仕組みを作る | ブランドのファンを増やし、長期的な関係を強化することで売上を伸ばす |
消費者の位置づけ | 商品を購入する「顧客」 | ブランドを支え、ともに成長させてくれる「大切な存在」 |
消費者へのアプローチ | 企業側から一方的に発信する | ファンとの双方向のコミュニケーションを重視する |
売上拡大の具体的な手法 | ・広告やキャンペーンによる新規顧客の獲得 ・流通拡大や販路開拓による市場シェアの拡大 |
・ファンのリピート購入促進 ・ファンの自発的な口コミや発信促進(UGC=User Generated Content) |
ファンマーケティングのメリット
ファンマーケティングには、次のようなメリットがあります。
- ● ブランドのファンが増えるため、指名買いされるようになる
- ● 競合との価格競争に巻き込まれにくい
- ● ファンによるUGCで新規顧客を増やせる
ブランドのファンが増えるため、指名買いされるようになる
指名買いとは、複数の商品を比較するのではなく、最初からブランドを決めて購入することを指します。ファンマーケティングによってファンが増えると、自社ブランドの商品を迷わず選ぶ顧客が増え、安定した売上につながります。
競合との価格競争に巻き込まれにくい
指名買いが増えると、価格で選ばれることがなくなるため、値下げも必要なく、価格競争に巻き込まれにくくなります。
皆さんは、車を買い換える際に、いろいろなメーカーのディーラーを回りますか。それとも、決まったメーカーの車に乗り続けていますか。前者のような顧客が多い場合は価格競争になりやすく、売上を伸ばすために値下げを余儀なくされることもあるでしょう。しかし、後者のような顧客が多ければ価格を下げる必要はありません。
つまり、ファンが増えると価格競争に巻き込まれにくくなるため、利益率を維持しやすくなるのです。
ファンによるUGCで新規顧客を増やせる
ブランドのファンは、SNSやレビューを投稿し、自発的にブランドの魅力を発信します。このような発信のことを、UGC(User Generated Content)といいます。
近年は、商品を購入する前にSNSやレビューをチェックし、その情報を参考にする人が増えています。広告は良い面を強調する傾向がありますが、UGCは良い面も悪い面も含めて率直に発信されるため、より信頼できる情報として受け止められやすいのです。
UGCは企業の広告よりも信頼性が高く、多くの消費者に影響を与えます。そのため、広告費をかけずに新規顧客を拡大できる点が大きなメリットです。
ファンマーケティングを成功させるポイント
ファンマーケティングを成功させるためには、どのような点に注意するとよいのでしょうか。
ファンのニーズを的確に把握する
ファンを増やし、ファンとの関係を強化するためには、顧客やファンが何を求めているかを正しく理解する必要があります。この判断を誤るとマーケティングは成果につながらないため、簡単そうに見えて実は難しいポイントの一つです。
ファンのニーズを把握するために、企業はさまざまな取り組みを行っています。
- ● アンケート調査
- ● SNS投稿やコメントの分析
- ● 購入データや利用履歴などの行動分析
こうした情報をもとにファンの期待を理解し、それに応える施策を重ねていくことで、ファンを増やし、関係をさらに強固にすることも可能になるでしょう。
ファンとの信頼関係を築く
ファンと企業の間で重要なのは信頼関係です。 先ほどの車の例で考えてみましょう。車を買う際に、いろいろなメーカーのディーラーを回る人もいれば、決まったメーカーの車に乗り続ける人もいます。
同じメーカーを選び続けている人には、それぞれに理由があり、デザイン、安全性、乗りやすさなど重視する点は異なるでしょう。しかし、そのメーカーを信頼しているという点は共通しているはずです。
顧客の信頼を得ることは、ファンを増やすための第一歩なのです。
ブランドコンセプトを軸に展開する
ファンマーケティングは、ブランドコンセプトを軸に展開することがポイントです。つまり、自社ブランドの価値を正しく伝え、それに共感するファンを増やすということです。
なぜなら、ブランドコンセプトと合っていないファンが増えたとしても、それは一時的な共感に過ぎないため、価値観のずれを感じれば離れていってしまうからです。自社ブランドに愛着を持ち、長く応援し続けてもらえるのは、ブランドの価値を正しく理解し、ブランドそのものに共感しているファンなのです。
本当の意味でファンを増やすために、まずブランドコンセプトを明確にし、それを軸にした取り組みを続けていきましょう。
ファンマーケティングの進め方3ステップ
ここまでは、ファンマーケティングの概要を解説してきました。ここからは、ファンマーケティングを進めるための具体的な方法を紹介します。
- 1. ブランドコンセプトと価値を理解する
- 2. ファンの体験を設計する
- 3. ファンとの関係を育む
1. ブランドコンセプトと価値を理解する
ファンマーケティングは、ブランドコンセプトに沿って進めるのがポイントだとお伝えしました。そのためには、まずは担当者である皆さんがブランドコンセプトや自社ブランドの価値、存在意義を正しく理解する必要があります。
ブランドコンセプトが決まっていない場合は、明確にすることから始めましょう。
2. ファンの体験を設計する
ブランドのファンは、ブランドや商品の体験を積み重ねることで育まれていきます。そのため、ファンマーケティングに成功している企業は、あらゆる場面で顧客の共感を得られるように体験を設計しています。ファンは偶然に増えるのではなく、意図的に増やしていくものなのです。
商品やパッケージはもちろん、店舗や接客といった細かな部分にまでブランドコンセプトを反映させ、信頼関係を育めるように設計していきましょう。
3. ファンとの関係を育む
企業にとって、ファンとの関係を継続的に育んでいくことはとても重要です。ファンとの関係の育み方はブランドによって異なりますが、たとえば次のようなものがあります。
- ● 販促活動によって来店のきっかけを増やす
- ● 新商品を継続的に発表する
- ● ファンが参加できるイベントを開催する
- ● SNSを通じて交流する
これらの機会でファンが満足し、共感を深められるようにすれば、ブランドへの愛着はさらに強まり、長く応援し続けてもらえるようになるでしょう。
まとめ
この記事では、ファンマーケティングについて解説しました。
- ● ファンマーケティングとは
- ● ファンマーケティングとマーケティングの違い
- ● ファンマーケティングを成功させるポイント
- ● ファンマーケティングの進め方3ステップ
ファンマーケティングを成功させるためには、ブランドコンセプトを明文化し、それに沿って進めるのがポイントです。長期的に売上を伸ばし、事業を成功させるために、まずはブランディングの基盤を作ることから始めましょう。
グラビティーワン株式会社では、ブランド戦略についてのご相談を受け付けています。ブランディング、インナーブランディング、ブランドコンセプト作り、デザインなど、15年にわたって一橋ICSで講義を務めた亀谷がお手伝いしますので、まずはお気軽にお問合せください。