「大阪ステーションホテル」で見えた、文化創造の競争力

株式会社ジェイアール西日本ホテル開発(JR西日本ホテルズ)様

私たちグラビティーワンは、「THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection」(「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」以下「大阪ステーションホテル」)(JR西日本ホテルズの新ホテルブランド)のブランディングプロジェクトを通じて、文化が持つ本質的な価値を再認識しました。文化は過去の遺産として受け継ぐものではなく、現代のビジネスの中で新たな価値を生み出す要素です。ホテルというフィールドで得た知見を、今後は企業ブランディングにも応用し、持続可能で競争力のあるブランド構築のお手伝いをしてまいります。

■ 文化をブランディングに生かす方法
今回のプロジェクトでは、文化をブランドの一部として可視化し、宿泊客に伝えることの重要性を学びました。特に、次の3つの視点は今後のブランド戦略においても大きな示唆を与えてくれます。

1. デザインとストーリーテリングによる文化の可視化
文化を単なるコンセプトにとどめず、空間デザインや体験プログラムを通じて直感的に伝えることが、ブランド価値の向上につながる。

2. 地域との連携によるリアルな体験の創出
文化の魅力を最大限に引き出すには、地域の職人や企業との連携が不可欠。今回のプロジェクトでも、大阪の伝統を現代のホスピタリティの形で表現することが求められた。

3. 社会における文化の役割の再定義
文化は観光資源にとどまらず、企業やブランドのアイデンティティを強化する要素となる。文化を軸に据えたブランド戦略は、持続的な競争優位性を生み出す可能性を秘めている。

■ 「大阪ステーションホテル」について
2024年7月に開業した「大阪ステーションホテル」は、マリオット・インターナショナルの個性あふれる独立系ホテルからなる「オートグラフ コレクション ホテル」ブランドとして、日本では現在5軒目のホテルです。
また、このホテルの場所は、1874年に開業した初代大阪駅の跡地でもあることから、この土地の記憶を継承し、地域の歴史や文化を未来へ紡ぎ、予期せぬ驚きや新たな価値を提供する、唯一無二の時空(とき)を超える旅の基点として、大阪の歴史や鉄道文化を体験できるようにデザインされており、館内には、初代大阪駅を思わせる赤レンガ調のデザインや、改札を模したフロントデスクが設けられています。こうした演出によって、視覚的にも「駅と鉄道の記憶」を感じられる空間となっています。

また、客室には大阪の飴文化やだし文化を体験できるアメニティが用意され、宿泊を通じて自然に大阪の文化に触れることができます。こうしたディテールの積み重ねが、ホテルのブランドとしての独自性を生み出し、他の宿泊施設との差別化につながっています。

■ グラビティーワンが支援したブランディングの役割
私たちは、「大阪ステーションホテル」のブランドアイデンティティを確立するために、以下の領域を担当いたしました。

・ブランドナラティブの言語化
「大阪ステーションホテル」が伝えるべき価値やナラティブを明確化し、ブランドとしての一貫性を確立するとともに、持続的に発展できるよう、その基盤構築を支援いたしました。

・ホテル名およびレストラン名のロゴデザイン
ホテル全体のブランドアイデンティティに合致するロゴを開発し、レストランについてもコンセプトに沿ったロゴをデザインしました。

・館内のブランドカラーやタイポグラフィーの監修
空間デザインに統一感を持たせるために、ブランドカラーやフォントの選定を行い、視覚的なブランド体験の強化を支援しました。

・客室アイテムのパッケージデザイン
客室内で提供されるアメニティのパッケージデザインを支援し、高品質のサービスを感じられるディテールを組み込みました。

・ブランディングコンサルテーション
プロジェクト全体を通じて、ブランド価値を最大化するためのコンサルティングを行いました。

なお、館内のインテリアデザインは担当しておりません。また、ホテル内での具体的な企画立案や実践は「大阪ステーションホテル」の開発スタッフが主体となって進められました。私たちは、ブランドの核となる部分を形作ることに注力し、ホテル全体のブランド統一をお手伝いさせていただきました。

この経験をもとに、私たちは今後も文化を活かしたブランディングの可能性を探求し、企業のブランド価値向上を支援してまいります。